作物には数多くの品種が存在し、各品種には多収性や耐冷性、耐病性など複数の違った特性が備わっている。どの品種を選ぶかによって、作物の単収や品質に異なる影響をおよぼすだけでなく、気温や疫病などの外的ストレスに対する抵抗力にも差異が生じる。農家は、毎年変化するこれら外的条件に合わせて、各品種が持つさまざまな特性の良し悪しを考慮しながら、作付けする品種を決定してきた。本研究では、このような農家の適応行動をモデル化し、日本の水稲に関する長期パネルデータを用いて計量分析を行なった。分析の結果、気候変化が農業生産(単収・品質)へおよぼす影響は、品種選択を通じた適応行動によって緩和されている可能性が示された。
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