研究実績の概要 |
本研究の目的は、空港使用料の転嫁や帰着が、その課金方法によってどのように異なるかを実証的に明らかにすることである。現在の課金方法の主流は、フライト数に応じての課金である。しかし、航空会社の業界団体は旅客数に応じて課される料金のウエイトを増すことを要求しており、それらをどのように組み合わせるべきかについての関心が高まっている。
当該年度には、2004-2005年に日本の国管理空港において実施された料金体系変更の効果の推計を試みた。そこでは、フライト数に応じた料金が減額された一方、旅客数に応じた料金が増額された。Difference-in-differencesの考えかたに基づく分析や、構造モデルに基づくシミュレーション分析によって、それらの効果を推計した。本研究では、運賃だけではなく、フライト頻度(ある路線における1日あたりの便数)への効果にも注目している。フライト頻度は、航空旅客需要や旅客効用に影響を与えうることが既存研究によって明らかにされている。フライト頻度が多いほど、旅客は自分の都合に合わせた便を選びやすくなるためである。分析の結果、(1)旅客数に応じた料金の大半が航空運賃に転嫁される一方、フライト数に応じた料金は運賃に有意な影響を与えないこと、(2)どちらの料金もフライト数を有意に減らすこと、(3)当時の日本の航空産業の状況においてはフライト数に応じた料金よりも旅客数に応じた料金のほうが望ましかったこと、が明らかになった。
これまでの研究成果は、国際学会(The 21th Air Transport Research Society world conference, the University of Antwerp, Belgium)や北海道大学での研究会にて発表した。また、論文を英文査読誌に投稿した。
|