本研究は、ベトナムのアパレルテキスタイル産業クラスターの中小企業の企業に注目し、企業活動におけるただ乗りを定量的に検証するものであり、2つの研究から構成される。 1つ目の研究では、中小企業を対象に実施した輸出促進プログラムへ招待された企業の参加の意思決定が、同プログラムに招待された仲間企業の参加の意思決定に影響を受けるのか、を定量的に検証した。もし仲間企業がプログラムに参加すれば、自社は参加しなくともプログラムで提供される情報を獲得できるため、ただ乗りは起こりうる。分析の結果、ただ乗りが輸出促進プログラムの参加の妨げになっている結果は得られなかった。申請者は、本研究を国際学術雑誌であるEmpirical Economicsへ投稿し、受理された。 2つ目の研究では、仲間企業の輸出活動が企業の輸出にどの程度影響を与えているのかを定量的に検証した。輸出を開始する企業は輸出に関連する情報(輸出の手続き、輸出先の消費者の好み、など)が十分に得られていない。企業は実際に輸出を行うことで、それらの情報を獲得することができるが、それらの費用を負担する必要がある。その場合、企業は自社では輸出せずに、他の輸出企業から輸出に関連する情報を獲得することができるため、ただ乗りが起こる可能性がある。分析の結果、情報交換をしている企業が輸出すると企業が輸出をしなくなる傾向が明らかになっていた。ただし、ただ乗り以外のメカニズムが働いても、仲間企業の輸出が自社の輸出を下げる可能性があるため、さらなるメカニズムの検証が必要である。申請者は本研究を国際学術雑誌に投稿し受け取った査読者のコメントや研究会でのコメントに基づいて論文の改定を行っている。
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