研究課題/領域番号 |
17K13739
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
木口 武博 早稲田大学, 商学学術院, 助教 (00409624)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 移民 / 動学的一般均衡モデル / 賃金交渉力 / 労働市場 / マクロ経済学 |
研究実績の概要 |
本研究は、移民の拡大が受入国のマクロ経済動学に及ぼす影響を分析することを目的とする。研究課題の初年度にあたる平成29年度は、アメリカ経済を対象として、労働市場、とりわけ賃金交渉力に与える移民の影響について分析を行った。
筆者がこれまでに構築した、動学的確率的一般均衡モデルに移民を組み込んだ基本モデルおいては、労働者の賃金に対する交渉力の程度が外生的な移民の増加と同時に変化すると便宜的に仮定されており、どのようなメカニズムによってそれが引き起こされるかについては明らかにされていなかった。そもそも移民の増加と賃金交渉力の因果関係は、双方向的であることが考えられる。例えば、移民労働者は労働組合を形成するのが難しいため、結果として賃金交渉力は低下すると考えられる。逆に、賃金交渉力の低下により、労働環境が悪化し、現地労働者が放棄した仕事の穴を埋める形で移民労働者が受け入れられる可能性もある。
そこで、移民と賃金交渉力の関係を分析するために、まずは1971年から2009年までのアメリカの最低賃金、労働組合加盟者数、失業手当に関するデータから、賃金交渉力を表す指標を構築し、それが減少傾向にあることを明らかにした。現在は、ベクトル自己回帰(VAR)モデルを用いて、構築された賃金交渉力の指標と移民の関係について実証分析を行っているところである。今のところ、変数の選択や識別条件によって異なる結果が得られているが、頑健な結果が得られれば、それを基本モデルに反映させ、論文の形に仕上げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、筆者が就いていた早稲田大学商学部助教の職の任期満了が近づき、新たに就職活動を行う必要があったため、本研究に割く時間が制限され、当初予定していた研究が十分に進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、基本モデルに異なる技能を持つ労働者(熟練労働者と未熟練労働者)を導入し、移民の増加が現地および移民労働者間の賃金格差や経済全体の労働分配率に与える影響について分析する予定である。また、研究が順調に進めば、移民の拡大が急激な政府債務の上昇による影響を緩和できるかどうかについても考察し、論文としてまとめる。また、国内外の大学や学会での発表を通じて論文の質を向上させたのち、査読付きの国際学術誌へ投稿し、早期の掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算を100円単位まで無理に使い切ることをしなかったため、少額の次年度使用額が生じている。次年度の消耗品の購入予算に追加する予定である
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