研究課題/領域番号 |
17K13739
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
木口 武博 京都先端科学大学, 経済経営学部, 准教授 (00409624)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 移民 / 動学的一般均衡モデル / ベイズ推定 / 労働市場 / マクロ経済学 |
研究実績の概要 |
本研究は、移民の拡大が受入国のマクロ経済動学に及ぼす影響を分析することを目的とする。研究課題の三年目にあたる令和元年度は、これまで取り組んできたモデルから、Christiano、Eichenbaum、Trabandt(2016)の中規模マクロ経済モデルへと基本モデルを変更し、モデルの拡張およびベイズ推定作業を本格化した。
モデルの拡張においては、移民を導入するだけでなく、賃金交渉力ショックを同時に組み込むことにより、移民労働者が現地労働者とは異なる賃金交渉力を持つ可能性を考慮し、移民が与える潜在的なマクロ経済的影響を説明することを試みている。ベイズ推定では、必要なデータセットの収集を進め、移民に関する時系列データを含む9系列のマクロ経済変数を用いて拡張モデルの推計を行い、初歩的な結果を得た。
研究を進める過程ではイギリス・ロンドンに出張し、ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校経済学部のAndrew Mountford 教授と上記の分析に関する打ち合わせを行った。また、上述の通り基にするモデルを変更する必要が生じたため、当初の研究計画を一部見直し、補助事業期間の一年延長を申請した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、上記の通り、既存モデルに移民と賃金交渉力ショックを組み込む拡張に成功し、その拡張モデルを用いて、パラメータをベイズ推定する段階に入っている。現時点では、移民労働者は賃金交渉力が低いために雇用が拡大されるというモデルが、実際のデータに対して当てはまりが良いことを確認している。現在はさまざまな頑健性のチェックを行っているが、移民ショックと賃金交渉力ショックが互いに相関しあうVAR過程を考えた場合には、推定がうまくいかいことが判明した。今後は事後分布を近似するためのメトロポリス・ヘイスティングス・マルコフ連鎖モンテカルロサンプリングに代わる,逐次モンテカルロサンプリングアルゴリズムと呼ばれる手法を参考にしながら解決策を検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和二年度は研究課題の最終年度にあたるので、これまでの結果を論文としてとりまとめ、まずはワーキング・ペーパーとしてその研究成果を公表する。新型コロナウィルスの感染拡大により、セミナーでの発表や海外での発表・研究打ち合わせについてはどこまで実施できるか不透明であるが、オンラインでできるものは実施し、必要に応じて論文の加筆・修正を行う。論文の完成後は、査読付きの国際学術誌へ投稿し、早期の掲載を目指す
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要欄に記した通り、当初の研究計画を一部見直し、補助事業期間の一年延長を申請したため、一部を来年度の研究費として使用する予定である。
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