研究課題/領域番号 |
17K13744
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 大輔 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任講師 (00791253)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生産ネットワーク / 貿易 / サプライチェーン / 間接輸出 / 波及効果 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に得られた回帰分析等の実証結果をもとに、理論モデルの構築とカリブレーションや構造推計に注力した。モデルにおいては生産性の異質性をもつ多数の企業が労働と中間財を組み合わせ、差別化された財を生産する二国間の一般均衡モデルを構築した。生産性の高いサプライヤーを多数持っている企業の生産性も高くなり、需要サイドにおいても同様のことが言えるため、企業間の相互依存性を同時に解くモデルとなっている。全要素生産性が高い企業は生産ネットワークによってさらに生産性が増幅されるという特徴が生まれる。この状態で貿易自由化を進めると、一方ではより少数の大企業だけが輸出に参加できることになるが、もう一方でそれらの輸出企業の需要増大は間接的に国内のサプライヤーに伝播する。そのため貿易が企業間格差に及ぼす影響はパラメータの値に依存することがわかった。東京商工リサーチの取引ネットワークデータでは輸出企業が国内に数多くの中小企業サプライヤーを抱えており、間接的な川上へのサプライチェーン波及効果が大きいことがわかった。またネットワークのアソータティビティや仕入先、販売先の数の分布等をカリブレーションして、反実仮想実験も行った。これらの結果をイェール大学や香港大学、東京大学等のセミナーで発表し、国際貿易やサプライチェーンの専門家から様々有益なフィードバックをもらうことができた。今後はそれらの意見を参考にモデルを改良し、より精緻な構造推計をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実証研究においては為替変動がどのように国内のサプライヤーに波及するかを差分の差分法や回帰分析で解析し、有意な結果を得るとともに一本の論文にまとめることができた。この実証結果をもとに理論研究に取り組み、企業の異質性と生産ネットワークを考慮した一般均衡モデルを構築した。当初予定していた輸入のオプションをモデルに組み込むには至っていないが、今後改良を進め、こちらも一本の論文にまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は実証研究でさらなるエビデンスを提示するとともに、理論面でもより精緻なモデルを構築していく。具体的には為替変動という外生ショックだけではなく、2000年代の日本のEPA参加や、産業別地域別に変化のある変数を用いて操作変数とし、因果関係に踏み込んで推定する。当初の予定では政府統計である企業活動基本調査と東京商工リサーチのデータを接続して分析する予定であったが、技術上の問題が発生したため、今後は東京商工リサーチの企業レベルの貿易データほ補完しながら分析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の拡大に伴い、令和2年3月にアメリカのロサンゼルスとワシントンDCで予定していた研究打ち合わせ及び発表をキャ ンセルすることとした。現在のところ、本年10月以降に同地への出張を予定している。
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