本年度は新型コロナウイルス感染症拡大を鑑み、新型コロナウイルスと経済活動というテーマで研究を進めた。日本国内においても緊急事態宣言発出等の人流の抑制によって経済活動を規制する政策がなされる中、感染症対策と経済活動の両立における定量的な分析がなされていなかったのが動機である。東京大学の仲田泰祐氏と共に、疫学モデルに経済活動を組み込んだモデルを構築し、今後の経済活動の推移と感染症による被害のシミュレーションやトレードオフを提示した。2021年1月からは、毎週最新のデータで分析を更新し、ウェブサイトで広く発信している。緊急事態宣言でしっかりと新規感染者数を下げ切ってから解除すると、感染症対策と経済活動の両面から望ましいとの結論が得られた。基本モデルのシミュレーションをまとめた論文は経済産業研究所のディスカッションペーパーとして刊行された。これらの分析内容はコロナウイルス分科会やアドバイザリーボード、内閣府や東京都に提出され、政策立案プロセスにも一定の貢献をすることができた。さらにこの分析を発展させ、変異株蔓延シナリオ、ワクチン接種の最適配分計画、都道府県別の月次GDPの構築等を進め、論文にまとめた。
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