研究課題/領域番号 |
17K13748
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 誠 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (50722542)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国際課税制度 / 多国籍企業 / 利益移転 / 租税回避 |
研究実績の概要 |
多国籍企業は法人税率や税制の異なる様々な国・地域に子会社や支店を設立し、事業を展開している。そのため、企業グループ全体での税負担を減らすために、高税率の国から低税率の国へと、関連企業間の取引を利用して利益を移転する誘因を持つ。 本年度は、日本の多国籍企業の利益移転行動を企業レベルの財務データを用いて実証的に分析した。本研究の特徴は、投資先国の法人税率だけではなく、国際課税制度の影響も考慮しながら利益移転行動を分析している点にある。 日本は2009年度税制改正において国際課税制度の変更を行い、日本の親会社が海外子会社から受け取る配当を原則非課税(益金不算入)とした。その結果、多くの日本企業にとって、海外利益に対する税負担が軽減された。そのため、日本の多国籍企業の利益移転行動がこの税制改正をきっかけに活発化している可能性がある。 そこで本研究では、米国の多国籍企業の海外子会社と比較して、日本の多国籍企業の海外子会社の利益移転が2009年以後に活発化しているかどうかに着目して分析を進めている。利益移転の程度を計測するための方法としては、当該分野での標準的な手法であるHines and Rice (1994)が開発したアプローチを採用している。 現時点の主要な分析結果は以下の通りである。1)米国の多国籍企業の海外子会社と比べると、日本の多国籍企業の海外子会社の利益移転の程度は平均的に小さい。2)日本の多国籍企業が所有する大規模な海外子会社は、2009年度税制改正に強く反応して利益移転を活発化させた。本年度はこの研究の最新の分析結果を"Territorial Tax Reform and Profit Shifting by US and Japanese Multinationals"という論題で国内外の学会や研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
利益移転に関する研究の初稿ができ、さらにこの研究を学会や研究会で発表することで、今後分析を改善するための方針が定まったから。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き利益移転に関する研究を進める。研究発表の際に受けたコメントや助言をもとに論文を改訂する。その上で改訂版の論文をワーキングペーパーとして公表し、学術誌に投稿することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に本研究課題に関する国際会議や研究会に参加する必要があるから。また、次年度に論文の英文校正費を支出する予定があるから。
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