2021年度は、グローバル化と企業の外国人雇用の関係をみる研究、および外国人労働者と日本人労働者の賃金に関する研究を行った。 グローバル化と企業の日本人雇用の関係をみる研究については、査読誌への投稿過程で大幅な改訂を行った。海外との厳しい競争を実感する企業は、非高技能外国人労働者の雇用を考える確率が高いだけでなく、R&Dへの投資にも消極的となる。特に、日本人労働者が充足する中でも非高技能外国人労働者の雇用を計画する企業では、日本人ブルーカラー労働者から非高技能外国人への切り替えという代替関係が示唆される。また1990年代後半の製造業中小企業の労働集約的な生産への志向は、その後の「失われた30年」で顕在化した日本の中小企業の低生産性の一因としても解釈されうる。 外国人と日本人の賃金に関する研究では、2019年度の「賃金構造基本統計調査」を再集計し、賃金率を共通の指標として、日本の労働市場内での外国人労働者や雇用事業所の位置を横断的に整理した。そして、外国人高技能者と非高技能者の間では賃金の水準や上がり方が大きく異なり、両者は労働市場内で明確に区別されていることを確認した。非高技能外国人の中でも、技能実習生の処遇は特に低く、正規雇用者や非正規雇用者など技能実習生以外の外国人グループの賃金にキャッチアップするようなキャリアラダーも見出せなかった。また、事業所レベルでの分析からは、外国人の賃金率が高い(低い)事業所では、同じ事業所の日本人の賃金も高い(低い)ことがわかった。総じて、事業所は高技能外国人と非高技能外国人を明確に区別しており、日本の労働市場において両タイプの外国人は、全く異なるポジションに位置することになる。
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