研究課題/領域番号 |
17K13752
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
湯之上 英雄 兵庫県立大学, 経済学部, 准教授 (10509590)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地方財政 / 財政健全化法 / SURモデル |
研究実績の概要 |
本研究では、「財政健全化法」による地方の財政運営への影響を実証分析や現地調査を通じて把握することを目的としている。特に、「財政健全化法」で新たに導入された健全化4指標を分析対象とし、変数間の相関に注目したSeemingly Unrelated Regressions(SUR)モデルや空間計量モデルを推定し、健全化法に直面した地方政府がどのような影響を受けたのかについて実証分析で明らかにする。 研究期間の初年度にあたる本年度においては、分析に必要となるデータの収集および整理を行った。また、財政学などを中心として先行研究を参照して、分析手法の検討を行った。その上で、健全化4指標およびいくつかの財政指標を分析対象として、変数間の相関に注目したSURモデルを用いて予備的な計量分析を行った。分析の結果、健全化4指標は人口、高齢化人口、地方政府への移転財源でうまく説明されることが確認された。また、健全化指標間の相関を分析したところ、実質赤字比率と将来負担比率との間に負の相関が存在していることが確認された。これらの推定結果について、Australasian Public Choice Society、公共選択学会などの学会や研究会で口頭発表を行った。そうした研究成果の一部については、論文としてまとめた上で学術誌に投稿を行っており、既にRegional Science and Urban Economics、総合政策研究などの学術誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である本年度において予定をした地方自治体の財政データの収集と整理はおおむね想定した段階に到達できた。また、先行研究のサーベイも順調に達成できており、健全化法による地方財政への影響に関する分析手法の検討も進展している。これらに加え、収集したデータを元に予備的な実証分析を行い、Australasian Public Choice Societyや公共選択学会の年次大会での研究発表も実施した。予備的な実証分析であるため、今後、改善点や拡張する部分は残されているものの、こうした研究の進展度合いについては、研究計画書において初年度に計画した内容を十分に達成できていると考えられる。なお研究成果の一部については、既にRegional Science and Urban Economics、『総合政策研究』に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に沿って、初年度に引き続き、地方自治体のデータを用いた計量分析を継続していく。今後は、地方自治体同士の相互依存関係に注目して研究を進展させていきたいと考える。これまでの実証研究においては、地域間の相互依存に注目した分析がそれほどなされてきておらず、本研究でそうしたテーマに取り組むことは重要な意義を持つと考えられる。 また、統計データを用いた実証分析と並行して、「早期健全化基準」から財政状況を改善した自治体に対してヒアリング調査を実施する必要があると考えている。本研究で予定しているヒアリング調査は、上述の統計データを用いた実証分析と決して切り離されたものではなく、実証分析のモデル設定に生かしていく予定である。ヒアリングを行うことで、旧法の下で行われた財政再建と、現行法における財政健全化との比較が可能となり、財政健全化における利点や欠点を浮かび上がらせることが可能となる。現場に行くことによって、それまで気づいていなかった新しい視点も得られるものと考えている。 こうした研究成果を国内外の学会で発表し、その後学術誌への投稿を想定している。現在のところ地方財政学会での報告を予定している。研究の進展度合いをみながら、海外の学会での報告をしていく予定である。
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