本研究では、「財政健全化法」による地方の財政運営への影響を実証分析や現地調査を通じて把握することを目的としている。特に、「財政健全化法」で新たに導入された健全化4指標を分析対象とし、健全化法導入の前後と健全化法の影響をより強く受けるであろう団体とそうでない団体の差異に注目して、健全化法によって地方政府の財政運営がどのような影響を受けたのかについて実証分析で明らかにした。 最終年度においては、まず「財政健全化法」が施行される前の地方公共団体の財政状況に注目し、「財政健全化法」施行による財政運営への影響についての分析も行った。健全化4指標およびいくつかの財政指標を分析対象として、財政健全化法導入による変化に注目したDifferences in Difference推定(差の差推定)を用いて計量分析を行った。分析の結果、制度導入の前段階で財政状況の悪い団体は、制度導入後に他の団体と比べてより指標を改善させていることが確認された。 また、本研究をベースとして研究の進展もあった。第一は、旧「財政再建法」の下での地方政府の財政再建に関して合成コントロール法を用いた分析である。第二に、市町村合併直前の財政運営に関して傾向スコアマッチング法を用いた分析がある。因果推論を考慮したこれらの分析によって、地方政府の財政健全化を目指す上で有益な知見が得られた。 これらの研究成果について、International Institute of Public Financeの年次大会や国内の研究会などで研究報告を行い、国内外の研究者と議論を行った。研究成果の一部は、Economic Analysis and Policy誌などに掲載され、その他の成果も論文としてまとめた上で学術誌に投稿中である。
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