研究課題/領域番号 |
17K13757
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
高橋 主光 九州産業大学, 経済学部, 講師 (60756865)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 労働経済学 |
研究実績の概要 |
研究課題「社会復帰の経済学」に関し、本年度行ってきた作業は主に「主観的期待値と実測値の差異」に関する調査である。具体的には、「学校を卒業することで自らの賃金はどの程度上昇すると予測されるのか」「(若年無業者等が)就業等の社会復帰を達成したと仮定して、その際にどの程度の賃金を得ることができると予測されるか、逆に社会復帰の達成に伴う(特に心理的な)コストはどの程度であると予測されるか」という主観的期待値に関し調査を行い、調査対象の回答した値(賃金等)と実際の賃金等の値(希望職種における)に乖離はあるか、乖離があるとすればどの程度の大きさであるか、を確認する作業を行ってきた。 上記の作業を行うことで、「本来であれば就業等の社会復帰を果たしていて差し支えのない者が、主観的期待値と実測値の乖離によって実際には社会復帰を果たしていない」といった状況の存否を明らかにすることが可能となる。より具体的には(無業者の場合)「仮に就職しても賃金はこの程度であろう」といったリターンに関する過小な主観的期待値を抱いていたり、逆に「就職するとこういう困難があるだろう」といったコストに関する過大な主観的期待値を抱いている場合、実測値を知っていれば問題なく就業していたであろう者が就業を断念する、という状況を招きかねず、そうした状況が実際に発生しているかの確認を企図し調査を行ってきた。また仮にそのような状況が発生している場合、正確な情報を伝えることで状況を是正できるという比較的コストのかからない介入を提示することが可能となる。 さらに上記調査の一環として、特に南アジア地域を中心とした海外調査も行い、「経済成長が著しい国の若者と、日本における若者が抱く主観的期待値には差異が存在するか」という視座も加えた。南アジア地域での調査結果は、所属する大学のプロジェクトにおいて叢書の一章という形態にて公表予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題においては、従来予定されていた期間よりも一年間延長することとなったが、それは当初の研究計画に対し、新たに国際比較や長期時系列的比較という、本研究をより深化させることの出来る新たな視座を追加し、その調査を行ってきたためである。ここまでの調査を基に研究計画を進行させることで、より実りの大きな研究成果を生み出せると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当研究課題の最終年度に該当するため、ここまでの調査結果を援用しつつより頑健な実証分析を行うとともに、研究計画中にあるシミュレーションを実際に進めてゆくことを予定している。特に「何が就業を含めた社会復帰を促進し得るのか」「どの程度の割合で社会復帰させるのが社会的に最適か」という研究計画の視座を保持しつつ、「最適な社会復帰割合」とそれを達成するために必要な介入の有無を、実証分析とシミュレーションより明らかにすることを目指すこととなる。その上で、論文の執筆等を実際に進行させてゆくことが、本年度の最終的な目標となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画中にあるシミュレーションをより精緻なものとするために、シミュレーションに先立ち、付加的に「数量経済史的視点」及び「国際比較的視点」を加え、その調査を新たに行ってきたため次年度使用額が生じた。 本年度において、研究計画当初より予定してきたアンケート調査・シミュレーションを行うことを通じ、当該額を滞りなく執行する予定である。
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