研究課題「社会復帰の経済学」に関し、当該年度においては「無業者の『勤労観』及び就労の便益に関する主観的期待値」に関する調査の実施が主だった作業となった。また同時に、研究の発展に向けた史料調査も行った。 具体的な作業内容としては、2021年度に刊行された、南アジアでの聞き取り調査を基にした「賃金に関する主観的期待値と人的資本投資との関係」に関する論文の内容及び一昨年度に行ったサーベイに基づき、無業者を対象に「就業等の社会復帰を達成したと仮定して、その際にどの程度の賃金を得ることができると予測されるか、逆に社会復帰の達成に伴う(特に心理的な)コストはどの程度であると予測されるか」「人口減少社会である日本において、社会経済的環境がどのように変化してゆくと思うか」「『働く』ということをどのように捉えているか」といった勤労観並びに主観的期待値に関するウェブアンケート調査を行った。 上記調査は現在、分析作業を行っており、それを基に論文執筆へと移行する。分析作業においては、「無業者は、社会復帰にまつわる便益(賃金等)と費用をどのように(主観的に)捉えているのか、そしてそれは実測値とどう異なるのか」「無業者の勤労観は有業者のそれとどのような差異(及び共通点)を持つか」「少子高齢化・人口減少やコロナウイルスの流行、国際情勢の変化等は無業者の社会復帰に関する意思決定にどのような影響を及ぼしているか」といった点を明らかにすることを目標としている。 また同時に、現代日本における(特に有業者の)勤労観がどのように形成され、そして変遷してきたかを明らかにするために、太平洋戦争前後における日本人の勤労観形成に影響を及ぼしたと考えられる事象に関する史料収集も行った。史料収集作業に関しては、上記のウェブアンケート調査に基づくデータ分析作業を補足し、より深化させる目的で行ったものとなる。
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