研究実績の概要 |
本年度では、研究期間で得られた研究結果を学術論文として取りまとめた。当該論文は、査読を通じて学術雑誌『現代ファイナンス』Vol41,pp1-25に掲載された。 当該論文では、本研究の手法によって算出された株式ファンダメンタルズ指標が、実際の株価と共和分関係にあることが示されている。これは、当該指標が株価のanchorとして機能することを示唆している。また、当該指標と株価との乖離によって、将来の株価が予測可能であることが分かった。この結果は、本研究で算出した指標を通じて、株式バブルの発生および崩壊をある程度予知できることを示している。また、VARを用いた計量分析からは、短期金利の低下、社債信用リスクプレミアムの低下、長短金利スプレッドの上昇、株式ボラティリティの上昇が、株式バブルの生成に関与していることが示された。これらの結果は、株式バブルの早期発見およびバブル崩壊に対する対処策を講じる際に、大いに有用であるものと考えられる。 本研究では、特定の経済モデルを仮定することなく、市場データから直接株式バブルを定量化することに成功した。これによって、既存研究では恣意性の強かった株式バブルの生成過程を、極力客観的な手続きを通じて明らかにすることが可能となった。本研究の結果は、資産価格理論、マクロ経済政策ならびに市場制度設計といった研究分野への学術的波及が期待されるだけでなく、現実にバブルへの対処法を議論する際にも大いに役立つものと思われる。
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