研究実績の概要 |
機関投資家による自らの執行における価格の影響を考慮に入れた執行問題に関し、単一の取引所における取引のみならず、取引所外における相対取引をも考慮に入れた執行問題に関する研究を行った。具体的には、1)取引所における執行と取引所外における執行の最適な配分に関する研究、2)取引所外において機関投資家の相手となる証券会社の提示する最適な手数料体系の構築、及びその手数料水準における機関投資家の取引所及び取引所外での執行問題の研究を行った。 1)に関しては、Kuno, Ohnishi, and Shimizu(2017)における価格モデルを基に、取引所外において取引時間外にその日の終値での執行に制限するのみならず、期中においても取引所外取引が行えるよう、確率応答制御問題への応用試みた。次に、2)に関しては、期末におけるVWAP(Volume Weighted Average Price)での執行に関する手数料の構築が可能である知見を得て、1)同様Kuno, Ohnishi, and Shimizu(2017)の枠組みにおいて手数料体系の構築を行った。そのVWAPでの手数料を用いて、日中における取引所取引時間内は取引所取引で、その後に終値で1度限りの取引所外で相対取引するときの最適執行問題に関する研究を行い、手数料体系(VWAP)と実際の執行(終値)が異なる場合の考察を行った。 これらの研究は主に最適な執行を行う機関投資家の視点、及び機関投資家が相対取引を行う際に手数料を設定する証券会社の視点の、双方の別々の視点により研究を行ってきた。この双方からの視点をゲーム理論及び契約理論等により適切に統合し、それを用いた最適執行問題への更なる考察は進行中である。
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