本研究では、石油価格の変動がどの程度インフレに影響を与えるのかについて時系列分析を行った。これまでの研究では、石油価格を含む商品価格の変動がインフレに与える影響は、一時的であることが分かった。またこの結果は、所得水準や為替相場制度の違い、インフレターゲティングの導入の有無、そしてコモディティの輸出国と輸入国の違いを考慮したとしても頑健であった。しかしながら、インフレの状態を考慮すると、高インフレ期においては、商品価格の影響は一時的であるが、低インフレ期においてはその影響がより持続的になることが分かった。そしてアメリカの石油価格のインフレへのパススルーに関する分析では、高インフレ期においてはそのパススルーが高く、低インフレ期においては低くなることが分かった。最終年度においては、さらに石油価格の変動の影響の非対称性に注目して分析を行った。関連研究では、石油価格の変動がGDPに与える影響は非対称となることが指摘されている。具体的には、石油価格の変動が正の時にはGDPに影響を与えるが、負の時には与えないということである。本研究では、正負の石油価格の変動の違いに焦点を当て、その影響がインフレに与える効果は異なるのかについて分析を行った。分析の結果、正の石油価格の変動に対してはインフレは反応するが、負の石油価格の変動に対してはあまり反応しないことが分かった。よって石油価格の変動がインフレに与える影響は非対称であると言えるだろう。
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