2017年度、2018年度までに得られた結果と、今年度新たに得られた研究結果を元に、国際学会において招待講演者として発表を行った。 今年度、特に重点的に取り組んだのは、field-programmable gate array(FPGA)を用いたハードウェアプログラミングによる金融計算の高速化である。これは本研究課題の目的の一つである、「Carr-Madan の方法を改良し精度や速度の向上をはかり、従来の数値計算手法との比較を行う」という方向性と合致するものである。FPGAは高並列可能かつ低消費電力であるが、ディジタル回路とハードウェア言語(HDL)の知識を前提としてアルゴリズムを記述しなければならないという固有の難しさがある。そこで、研究の第一段階としてMonte Carlo法を用いたoption価格の計算を試行した。FPGAを利用することで大きく高速化できると考えた点は、特に乱数生成とその後の計算部分である。通常のCPUと、高速な並列計算が可能であるGPUそれぞれの実行時間をFPGAと比較したところ、FPGAでは大きな高速化が達成でき、研究の方向性が間違っていないことが確認できた。確かに、現時点ではFPGAの特性とHDLの高水準言語との違いについて理解し、簡単なモデルでその有効性が確かめられたに過ぎない。しかし、ここで得られた知見をもとに、より高度なモデルでの実装やリスク計算などの異なる対象へと研究を進めていきたいと考える。
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