研究課題/領域番号 |
17K13765
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
田中 孝憲 関西大学, 商学部, 教授 (50587285)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 信用格付け / 格付会社 / 証券市場 / イベント・スタディ |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、投資家による格付会社の評価に着目し、新規に信用格付けを取得したことに対する証券市場の反応を実証分析により明らかにすることである。特に、アメリカの格付会社と日本の格付会社の比較検証を通じて、株式市場と債券市場における反応の違いを検証していく。 2018年度の主な研究成果は、これまで社債を発行したことがある上場企業が新規に信用格付けを取得した日を特定する作業を行ったことである。取得時期の特定にはS&Pのデータベースを活用した。このデータベースの特徴は、S&P だけではなくMoody’s ・格付投資情報センター(R&I)・日本格付研究所(JCR)のデータも取得できることである。これにより、4つの格付会社ごとに分析することが可能になる。 既存研究には、格付会社の持つ信用力が証券市場に与える影響を分析したものがある。具体的には、同じ企業に対して相対的に低い格付けを付与している格付会社の方が企業の審査に対して厳密に評価していると投資家は判断し、そのような格付会社から格付けを取得している企業は低い利回りを要求されることが報告されている。アメリカの格付会社では、Moody’sから格付けを取得している企業はS&Pから格付けを取得している企業よりも低い利回りを要求される。日本とアメリカの格付会社を比較した場合、アメリカの格付会社から格付けを取得している方が日本の格付会社よりも低い利回りを要求される。つまり、日米それぞれの格付会社の情報を集めることは本研究において極めて重要な意味を持っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進める上で、最も大きな障害になっていたのは、上場企業が新規に信用格付けを取得した日が特定できるデータを取得することである。この障害は、上記に説明したS&Pのデータベースを購入することで解決することができた。この問題の解決により、研究を進展させることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2017年度に導出した仮説の妥当性を実証分析によって検証していく。分析に必要なデータセットは、企業ごとの新規に信用格付けを取得した日の情報と証券市場のデータと組み合わせて構築する。特に、流通市場における個別債券の利回りのデータは日本証券業協会のwebsiteから取得する予定である。 データセットの構築後は、イベント・スタディ(Event Study)の手法を用いて、実証分析を行う。分析終了後は、研究論文にまとめる作業を行う。そして、国内外の学会で研究報告を行い、他の研究者から助言を受ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定のデータベースよりも安い価格のデータベースを購入することができたので、次年度使用額が生じた。これは2019年度の出張旅費やデータの購入に充てる予定である。
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