研究課題/領域番号 |
17K13765
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
田中 孝憲 関西大学, 商学部, 教授 (50587285)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 信用格付け / 格付会社 / 情報の不透明性 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、投資家による格付会社の評価に着目し、格付会社から初めて信用格付けを取得したことに対する証券市場の反応とその決定要因を実証分析により明らかにすることが目的である。 2021年度はMoody’sの日本企業の信用格付けのデータを用いて、イベント・スタディ(Event Study)により株式市場の反応を分析しようとした。しかし、Moody’sから格付けを取得している日本企業は少ないため、分析を行う上で十分なサンプルサイズを確保することはできなかった。 そのため、当初の研究計画を変更して、発行体が複数の格付会社から信用格付けを取得している場合、それらの格付けの水準の違いを分析することにした。一般的に、海外の格付会社と国内の格付会社では同一の発行体に対して、格付けの水準が異なることが知られている。日本の債券市場においては、海外の格付会社の方が相対的に低い格付けを付与している。また、日本国内の格付会社においても格付投資情報センター(R&I)の格付けが日本格付研究所(JCR)よりの低い格付けを付与している場合が多い。このような状況下で、どのような企業属性によって信用格付けの水準の違いを生み出すのか検証を行う。 2021年度は、日本証券業協会が公表している統計をもとに、2005年度から2021年度の17年間の新規発行社債の信用格付けのデータセットを構築した。その結果、複数の格付けを取得しているのは日本の格付会社(JCR・R&I)の組み合わせが多いことがわかった。また、海外の研究では銀行は複数の格付会社から格付けを取得しているが、日本の銀行のほとんどは1つの格付けしか取得していなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
日本証券業協会が公表している統計をもとに、2005年度から2021年度の17年間の新規発行社債の信用格付けのデータセットを構築した。このデータセットから、日本の社債市場における信用格付けの取得の状況を把握することができた。しかし、実証分析を行うことはできなかったので、現在までの進捗状況は遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、新規発行社債の信用格付けのデータセットをもとに、どのような企業属性によって信用格付けの水準が異なるのか回帰分析を行う。特に、企業の「情報の不透明性」に着目し、「不透明性」を測る代理変数を作成する。一般的に、信用格付けは発行体の債務履行の可能性を評価したものである。格付けの水準が格付会社の間で異なるのは、発行体が格付会社に対する情報の不透明性が存在している場合が多い。情報の不透明性を表す変数を用いて、信用格付けの水準の違いに与える影響を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画を変更し新たな研究テーマに取り組むことにしたので、次年度使用額が生じた。これは2022年度の出張旅費やデータの購入に充てる予定である。
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