研究実績の概要 |
2022年度は、日本の格付会社であるJCR(日本格付研究所)とR&I(格付投資情報センター)の両方から格付けを付与されている新規発行の普通社債を対象に、「JCRとR&Iの格付けの水準の差の決定要因」と「格付けの水準の差がイールド・スプレッド(yield spreads)に与える影響」について分析を行った。分析に用いたデータは、日本証券業協会が公開している2006年度から2021年度の16年間の新規発行の普通社債に付与された信用格付けのデータである。このデータの特徴として、各債券ごとに取得している格付会社とその格付けの水準の情報が入手できることである。 まず、JCRとR&Iのそれぞれの格付けに対して、発行企業の属性によって格付けの水準が異なるのか検証を行った。この分析により、JCRはR&Iに比べて、規模が大きい企業、企業年齢(設立以来の経過年数)が長い企業に対して高い格付けを付与していることがわかった。 次に、発行企業の属性によって格付けの水準の差が変化するのか分析を行った。分析結果より、規模が大きい企業、企業年齢が長い企業ほど格付けの水準の差が大きいことがわかった。この結果は、JCRとR&Iの2つの格付会社による企業の信用力の評価の違いが、結果として格付けの水準の差を生じさせていることを示している。 最後に、格付けの水準の差がイールド・スプレッド(yield spreads)に与える影響について分析を行った。格付けの水準の差が大きい債券ほど, 新規発行債券のイールド・スプレッド(yield spreads)が高いことがわかった。これは、格付けの水準の差が大きいことに対して投資家は否定的に評価していることを表している。
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