研究課題/領域番号 |
17K13768
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
蓮井 康平 松山大学, 経済学部, 講師 (90780619)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 最適金融政策 / 流動性の罠 / ゼロ金利政策 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では,流動性の罠における金融政策について,民間主体の期待の役割に焦点を当てて分析を行った.流動性の罠の下では,金利の調整による政策方式が大きく制限されるため,民間主体の期待にいかに影響を与えるのかが重要な点となると考えられる.分析結果は,論文「Role of Expectation in a Liquidity Trap」(UTokyo Price Project Working Paper Series University of Tokyo No.99, 2018,共著)に研究成果としてまとめ発行した.本研究は,民間主体の期待形成が,流動性の罠において金融政策の効果に影響を与える可能性があることを明らかにした.期待形成は,中央銀行のターゲット値に部分的にアンカーされている場合と,当期のインフレ率を部分的に用いる場合の2つを設定した.分析の結果,コミットメント政策では期待形成の影響は小さいが,テイラールールなどのより現実的な金融政策ルールでは,期待形成のアンカーは有効であるが,当期のインフレ率を部分的に用いる場合は厚生を悪化させることが判明した.また,金利の慣性のテイラールへの導入は,当期のインフレ率を部分的に用いる場合の厚生の悪化を減少させる効果があることが判明した.
本研究は,「研究の目的」に記載したフォワードガイダンスに大きく関連する内容となっている.特に金利の慣性のテイラールールへの導入による厚生の悪化を減少させる効果は,フォワードガイダンスに関係する重要な効果であり,今後より詳細に分析する意義があると考えられる.また本論文を執筆する上で,関連する理論分析の文献について一通りサーベイすることで,フォワードガイダンスの文献サーベイについてもおおむね完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は関連分野のサーベイのみを行う予定であったが,共同研究者との研究により,新たな分析結果を提示することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
フォワードガイダンスの理論分析のサーベイが完了したため,今後は理論モデルを用いてシミュレーションを行う.当初は,金融摩擦を含んだ確率的動学一般均衡(DSGE)モデルにアドホックな損失関数で政策評価を行う予定であったが,近年多くの金融摩擦を含んだDSGEモデルで損失関数が整合的に導出されてきている.そこで,それらのモデルを用いて,まず流動性の罠の下での最適な金融政策を導出し,その際の金融市場の安定性について分析する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも旅費が安くすんだこと,使用予定の数値計算ソフトウェアが2017年度の研究におけるモデルシミュレーションで必要でなくなり購入を見送ったこたため.
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