本研究は、飲料・食品企業を対象とした国際関係経営史研究として、主に外資系飲料・食品企業の事業展開の歴史の考察を進めることが目的である。2021年度は、主に次の取り組みを実施した。①アメリカのハインツ社の日本事業に関する歴史分析。同社を対象とした分析を通して、日本事業で苦境に陥ったものの、その後、その状態を脱して発展に至る外資系企業の経営管理プロセスを明らかにすることができた。この成果を論文として発表した。②海外子会社の経営管理に関する知見の整理。海外子会社の経営管理に関する先行研究を吟味し、今後の研究についての展望を検討した。その成果の一部は書評の中で論じた。 研究期間全体を通して、複数の外資系飲料・食品企業の事業展開の歴史を明らかにしてきた。その結果、外資系企業にとって、たとえば、日本における協業システムを構築すること、主力製品に関する製品カテゴリーの定義を検討すること、市場内における自社のポジションを検討すること、などが事業の発展のために重要であったことを見出した。これら成果を論文として発表した。また、対象とした外資系企業は日本における新市場の創造・発展に貢献していた。こうした外資系飲料・食品企業の活動の実態を明らかにしたこと、およびその活動を通して新市場の創造や発展過程の一端を明らかにしたことは、国際関係経営史研究を深化することにつながっており、ここに本研究の意義と重要性がある。 ほかにも、外資系企業という海外子会社の経営管理に関する国際経営論についての整理・検討を行ってきた。国際経営論の知見を活用して、外資系企業の活動経緯に関する史実の解釈についても考察を深めた。この成果の一部は学会報告、書籍、論文および書評などの形で発表した。海外子会社の経営管理に関する国際経営論の知見を動員して、国際関係経営史研究を試みたことにも本研究の意義と重要性がある。
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