本研究の目的は、日本を代表する鉄道運営事業体である日本国有鉄道・JR各社を対象に、巨大企業組織内におけるマネジメントの機能と変遷がどのようなメカニズムで展開されたのか、一次史料に基づき歴史的に明らかにすることであった。 6年目である令和4年度には、(1)研究成果のとりまとめ、(2)鉄道創業150年を記念する諸行事への協力、(3)研究期間中に収集した資料類の整理、の3点を中心に研究活動を実施した。以下、それぞれの概要を示す。 (1)1950年代~80年代における国鉄経営についての論考を執筆した。具体的には、国鉄発足初期の現業機関管理、中長期の経営計画作成過程、政府・与党との意思疎通、組織・制度的事項の変遷と運用、財政再建期以降の諸部門による事業運営の実態、などについて、新たに発掘した資料に基づき検討した。これらは、2023年度中に公刊予定(コロナ禍のため刊行を1年延期)の『鉄道百五十年史』に採録される。 (2)2022年度は日本の鉄道創業150年のメモリアルイヤーであり、国土交通省、JR・民営鉄道各社などの手により様々な記念行事が実施され、報道等も多数に上った。これらの動きに対しては、その都度積極的に情報提供等を行った。また、2022年10月6日に挙行された政府の公式式典「鉄道開業150周年記念式典」において、出席者限りで配布された『鉄道開業150年記念写真史』(交通新聞社、2022年)の刊行に協力した。 (3)前年度に引き続き、鉄道整備計画に関する一次資料の整理を実施した。運輸省・国鉄等の諸委員会での議論経過、1970年代以降の新幹線・在来線整備の動き、1990年代における高速鉄道整備の制度設計、などにつき、時期・ジャンル別に資料目録や電子画像データを作成した。また、資料の収蔵先として東京大学経済学部資料室を選定し、将来的な資料公開も見据えつつ、関係者へのヒアリング調査を実施した。
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