研究課題/領域番号 |
17K13772
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
菊池 雄太 立教大学, 経済学部, 准教授 (00735566)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 大西洋経済 / 大西洋貿易 / 市場 / ドイツ / ハンブルク / ライプツィヒ / ザクセン / 大市 |
研究実績の概要 |
18世紀中頃から19世紀前半のドイツ・ザクセン地方における植民地物産市場の形成を,ドイツ最大にしてヨーロッパ有数の貿易都市ハンブルクとの関係に着目しつつ検証することが本研究の課題である。2018年度は,前半期において原稿提出済みのドイツ語著書の校閲を行った。また,2017年度の段階で収集した史料の一部について分析を行った。そうしたところ,ハンブルクとザクセン宮廷都市ドレスデンとの間の河川貿易に関するデータを得ることができたため,上述のドイツ語著書の巻末にその成果を追加した。当該書籍はドイツの大手学術出版社Boehlauから,2018年11月に刊行された。 夏期休業期間中にはハンブルクの史料からこのテーマにアプローチするため,同市の州立文書館で史料調査を行い,とくに19世紀におけるハンブルクの海上・内陸両方面との貿易関係について多数のデータを集めることができた。具体的には,ハンブルクと南北アメリカ大陸との間で取引された商品,ドイツ内陸からハンブルクを経由し輸出された製品に関する史料,ドイツ関税同盟参加に関する史料等である。 また,本予算により大西洋経済全般,ドイツ商人の活動,内陸ドイツ経済の発展,消費動向に関する文献を収集し,膨大な研究史をまとめる作業を行った。それは研究代表者が所属する機関の紀要に掲載する予定であったが,別誌(全国誌)から論文執筆依頼を受けたため,そちらへ切り替えることにした。現在執筆作業中である。 2018年11月3日に福井県立大学で開催された市場史研究会において,口頭発表を行った。その内容は『市場史研究』に論文として掲載予定である。 2019年3月29日に来日したドイツ人経済史研究者Michael North氏と長時間面会し,本研究に関して意見交換をした。本研究課題に関する研究動向,史料,文献の紹介を受け,さらに成果の一部の外国語での発表について相談した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度はライプツィヒの文書館で史料調査を行う予定であったが,2017年度の段階で,ライプツィヒでは十分な史料をスキャンすることができた。そのため2018年度はハンブルクの州立文書館で調査を行った。当該文書館における史料調査については,複製の制限による時間的制約が懸念されたが,同施設の制度変更により写真撮影が可能となっていたため,想定していた以上の多数にわたる史料を撮影・収集することができた。上述のように,2017年度に収集した史料の一部は,すでに原稿を提出し校閲段階に入っていたドイツご著書の巻末に付録として追加することができ,ドイツの大手学術出版社Boehlauから,2018年11月に刊行された。本研究課題の国際的発信であり,すでにドイツの大学の図書館にも配備され,とくにハンブルク大学では常時貸し出されている状態である。 福井県立大学(開催場所は福井市地域交流プラザ)で2018年11月3日に行われた第70回市場史研究会で口頭報告を行った。2019年10月末締切で報告内容は論文として提出され,『市場史研究』に掲載される予定である。フローニンゲン大学で開催される国際カンファレンスで報告予定であったが,校務との関係で参加を断念した。 総合的に,研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現段階で収集した史料は非常に多く,今後はこれらの分析を完了して,個別に論文の形で発表する予定である。本予算により収集した膨大な文献を研究史としてまとめる必要がある。後者に関しては,ある国内雑誌から掲載企画の打診があり,執筆とともに掲載の調整を進めている。 本研究課題の研究期間よりも後になってしまうが,2020年の社会経済史学会でシンポジウムを組み,研究成果を報告する予定である。 当初,2019年8月には未確認の史料の追加・補足調査を行う予定としている。現段階で相当量の史料が得られているものの,現時点ではハンブルクでの調査を計画しているが,新たな史料の収集以上に,すでに収集した史料の分析・整理と論文執筆の方により多くの時間を割くべきだと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍の購入費用の精算が翌年度になったため,未使用額が発生した。 次年度は引き続き図書購入の他,夏期に予定しているドイツでの史料調査および成果発表のための旅費等に使用する予定である。
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