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近年の東南アジア経済史では、近世から近代への転換期の東南アジア貿易に注目が集まっているが、重要な時期である19世紀初頭の貿易の実証研究は、資料不足により進んでいない。本研究はこの課題に対して、これまで注目が薄かった「輸入と消費」に着目し、新たな資料を活用することで解決を試みた。
第一に本研究は18世紀の東南アジアの多角的な貿易関係は、19世紀初頭にも維持されていたことを解明した。東南アジアはインドからの綿織物の輸入と中国向け現地産品の輸出によりアジア域内交易に統合されていた。そして貿易に伴う情報・交通コストに対応するため、リアウやシンガポールなどの港湾都市が中継港として発達した。
第二に、東南アジアとインドの貿易統計を駆使したことで、19世紀初頭の東南アジア貿易は増加傾向にあったことが示された。東南アジアではインド綿織物に大きな需要があり、その輸入は現地の商品作物栽培を刺激した。そこで本研究はインドの貿易統計を活用し、1800-25年にかけてインド・東南アジア間貿易は増加していたこと、特に綿織物の貿易が拡大していたことを解明した。東南アジアにおける消費財輸入の増加は、現地住民の生産活動への刺激と輸出拡大にもつながったと推測される。
第三に、東南アジアではインド綿織物の持続的な流通が、貿易成長を支えていたことが判明した。従来は19世紀前半にイギリス綿工業品が東南アジアに流入したことで、インド綿織物は流通から排除されたと考えられていた。しかし、東南アジアの資料とインド貿易統計によれば、インド綿織物は19世紀中葉まで東南アジアに流入し、イギリス品よりも質の良い商品として現地住民に好まれていた。こうして消費財の嗜好性という地域市場の状態が、東南アジアの多角的な貿易関係を支え、近代貿易の成長につながったのであった。
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