研究課題/領域番号 |
17K13780
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戎谷 梓 大阪大学, 経済学研究科, 招へい研究員 (90709867)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 研究論文の執筆 / 新規データの収集 / 新規データの分析 |
研究実績の概要 |
前年度末に課題として残った点に関する取り組みとして、国際ジャーナルへ投稿した研究論文で不採択になった論文の内容を根本から見直し、大幅に修正・改訂した上で、別の国際ジャーナルへ投稿した。また執筆活動と並行して、新規のインフォーマントに対するインタビュー調査を実施し、対象である複数の実務者の就業現場で行われているコミュニケーション場面に関するデータを収集した。集めたデータをNVivoを活用して多角的に分析し、各チームメンバーが有するメンタルモデルとその変容、加えてチーム・メンタルモデルの形成に関して分析を深めた。この作業により、チーム・メンタルモデルの形成プロセスに影響を与える要因を示すことができた。 また、年度中の8月にアメリカで行われたAcademy of Managementの年次学会において、関連する分野の研究者たちと幅広く交流を持ち、国際チームの人的資源管理や使用言語の管理の観点で有意義な情報交換を行うことができた。そこで構築した人的ネットワークを活用して、バーチャルチームのコミュニケーションを扱う研究者達との意見交換を深めることもできた。とりわけ、物理的に離れた者同士のコラボレーションや知識の共有、物事に対する理解の擦り合わせなどの問題について新たな知見を得ることができ、バーチャルかつ多国籍出身者で構成されるチームが乗り越えなければならない側面について、人種や文化の差異以外の問題に関して理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画として、今年度の目標は、インタビューを継続的に実施し、個々のチームメンバーが有するメンタルモデルの変化の有無について分析し、変化が見られる場合にはチーム・メンタルモデルの形成との関係について考察することであった。この目標の下、チーム・メンタルモデルの形成に影響を与えるコミュニケーション活動に着目しながら有意義な研究活動を行うことができた。いっぽう参与観察については、実施を計画していた対象企業によるコンプライアンスの問題で計画通りに実施することが困難な状況ではあるものの、インタビュー調査や当該企業からの提供資料等を通してその不足を補うほどのデータを入手できているため、分析において適切な議論を行うことが可能であると判断している。 加えて、当初の計画では今年度、NVivoにおける多様なマトリックスを用いて、チーム・メンタルモデルの形成プロセスについて分析を行い、チーム・メンタルモデル形成に影響を与える要因について考察し、知見を発信することも目標としていた。この点に関しても、研究論文を国際ジャーナルへ再投稿することによりクリアしていることから、研究は概ね当初の計画通り順調に進行しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である次年度は、これまでに収集してきたたデータの分析をさらに深め、考察結果の発信に重きを置く。調査や資料から得たデータに基づいて、チーム・メンタルモデルが形成されるまでの変容プロセスと、モデル形成に至るまでにチームメンバー間でどのような情報授受やインターアクションが行われたかを詳細に記述する。これにより、異なるメンタルモデルを有するメンバー間でチーム・メンタルモデルを円滑に形成するためのプロセスを明らかにし、本研究の締めくくりとして、モデル形成に必要なコミュニケーションの全体像を明らかにする。これらの知見は、国際ジャーナルへの論文投稿により明示的に発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度中に計画していた調査の遂行中に協力者側の事情で調査期間が長引き、調査実施地域での滞在が長期化した。そのため、本来年度中に実施を計画していた国内外の他の調査が実施できなかったため、予定していた旅費の一部が執行できなかった。 執行できなかった年度残額は、次年度にあらためて計画し直した調査のための旅費に充てることとし、当初の翌年度分助成金と合わせて使用する。
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