本研究は,株主による企業への関与として,最も基本的であるが重要な手段の一つと考えられる株主の取締役選任議案への議決権行使を実証的に分析することをその目的とする.本研究を通じた主たる発見事実は,以下の三点にまとめることができる.第一に,日本企業の取締役選任において,株主はエージェンシー理論の基本原則に沿って議決権を行使している.第二に,このようなエージェンシー理論の基本原則に沿った議決権行使は,株主が直面する制度環境の変容に伴い変化し得る.第三に,制度環境の変容が株主に与える影響は株主の属性ごとに異なる.
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