本年度は、昨年度に作成した調査票を用いて中途採用、新卒採用で内定を得て入社を控えた者を対象としてアンケート調査を行った。本研究では、組織が採用を強化したいと考えるような特性の属性を有する人材を効果的に採用するにはどういう採用を行うのが適切であるか(ターゲット採用)を明らかにすることを目的としているが、新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、適切に調査対象を捕捉してアンケート調査を実施するにはどうするのが適切であるのかを検討した。 当初の計画では、年度半ばには調査を行うことを考えていたが、従前と異なり新卒採用活動のスケジュールがどのように進むのか読みづらいことや、中途採用の実施にも景気の状況がどうなるか読めないことで年度前半には実施を組織がためらうのではないかと考え、調査は年度後半に行うこととした。前年度までに明らかにした構成概念と作業仮説を検証すべく、女性という属性を対象に行われるターゲット採用を実証的に検討した。超項目は、組織に感じる魅力、組織への就職意志、女性活用に関する明示的なシグナル(文言やイメージの活用)、暗示的なシグナル(組織体制、組織の評判)に加え、本人のステレオタイプへの適合性や組織による採用過程での説得等である。 新卒採用および中途採用の就職内定者(計1000名)のデータをもとに階層的重回帰分析を行った結果によると、平等な雇用機会があることを説明することには女性の採用にプラスの効果がある反面、積極的格差是正措置の説明を行うことで女性の採用にマイナスの効果があることなどが分かった。以上の結果をもとにターゲット採用を行う際に留意すべきことについて理論的・実証的に論じた。
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