本研究は、ソーシャル・イノベーションを捉える論理の探求を目的としている。この目的のもと、(1)社会的企業論を中心に制度派組織論や批判的経営研究など、理論的な視座や方法論にまで遡った文献レビューを通じて、ソーシャル・イノベーションを捉えるための理論的枠組みを検討すること、(2)経験的な研究を通じて実践的な含意を追求することを課題としてきた。 (1)先行研究のレビューに関しては、初年度の2017年度より継続的に社会的企業論、制度派組織論、批判的経営研究を軸に文献レビューを行い、理論的枠組みの検討を進めてきた。社会的企業論については米国、欧州、日本の社会的企業の動向に関して、制度派組織論については制度ロジックと物質性に関して、加えて、批判的経営研究をベースにしながら社会的企業を対象に批判的な検討を行う研究を中心にレビューを進めてきた。2022年度は、2020年度から進めてきた、制度ロジック研究の視座のもと社会的企業をハイブリッド組織として捉える研究のレビューを通じて社会的企業のマネジメントについて考察するとともに、制度ロジックと批判的研究の検討を通じて社会的企業を捉えるための方法論について考察し、論文として公刊した。 (2)経験的な研究についても初年度の2017年度から遂行してきた。具体的な成果としては2018年度に地域活性に従事した企業の事例分析をケースとして公刊した。2021年度には、コロナ禍によって照らされた労働や企業の問題に対して社会的企業の観点から考察し、その考察を含めた学会報告を行った。加えて、2021年度は、本研究の理論的枠組みを援用して、日本企業の管理実践の変容に関する考察を行い、学会報告を行った。2022年度は2021年度に行った、コロナ禍によって照らされた問題に対して社会的企業から考察した学会報告の内容をもとに方法論の検討を進め、その検討を含めた論文を公刊した。
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