3年目となった平成31年度は、データ分析と並行する形で論文の執筆に注力してきた。
第一に、海外子会社が置かれているネットワーク構造が当該子会社の撤退に与える影響を明らかにした。具体的には、海外子会社の輸出入行動に着目して海外子会社の輸出入行動に基づくネットワーク構造が、当該海外子会社の撤退行動にどのような影響を与えるのかを明らかにした。当該論文は国内の査読誌付学術誌への掲載を実現した。従来にはない海外子会社のネットワーク構造の観点から撤退要因を明らかにしている点で、理論的・実務的貢献を実現している。
第二に、海外子会社の撤退理由に着目した研究のブラッシュアップを遂行した。具体的には、海外子会社撤退の要因が、低パフォーマンスによる撤退と主体的撤退である戦略的撤退によってどのように異なるのかを、子会社要因、親会社要因、現地国要因のそれぞれの観点で分析を実施した。前年度の段階で分析の大枠を実施済であったことから、理論的および実証的観点からより精緻な内容とすることに注力した。分析内容はアメリカ経営学会(Academy of Management)および国際経営学会(Academy of International Business)にて研究報告を行った。それらのフィードバックに基づいて修正作業を進め、現在海外査読誌への投稿に向けた最終段階にある。分析は完了していることから、早い段階で執筆完了が可能な状態となっている。本研究は、従来の海外子会社撤退に関する研究が低パフォーマンスを前提としてきた点を問題意識とし、その前提とは異なる戦略的撤退の重要性を指摘している点において理論的・実務的な意義がある。
|