研究課題/領域番号 |
17K13793
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
伊藤 泰生 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (90769902)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 産業内多角化 / 関係性資産 / プラットフォームビジネス / コンシューマゲーム産業 / パネルデータ |
研究実績の概要 |
本研究では、産業内多角化と業績の関係における関係性資産の与える影響を明らかにすることを目的としている。関係性資産の影響を実証的に分析するため、平成29年度は大きく三つのことを実施した。第一に、本研究に必要なコンシューマゲーム産業のデータの構築を実施した。データはメディアクリエイト社の『ゲーム産業白書』より2016年までに発売されたゲームソフト約1万本ごとの販売会社や売上本数などのデータを入力した。さらに、企業同士の関りを測定するため、実際にゲームソフトの開発に携わった開発会社のデータを、企業の製品情報ページやDeveloper Tableより入手した。さらに、MobyGames Databaseより、ゲームソフトの開発に携わった人材に関するデータを取得した。これらの開発会社と人材に関するデータは、企業の外部企業との協働経験や人材同士の交流など、企業の関係性資産であるため、本研究の分析に関わる重要な変数である。 第二に、開発会社との関係性から仮説を構築し、その実証結果を8月に行われた日本経営学会において発表した。構築したデータをもとに、販売会社のゲームソフト開発において開発に携わった企業、内部開発と外部委託の割合などから、ゲームソフトの開発における外部企業との関係性を測定した。そして、その関係性が産業内多角化と業績に与える影響を分析し、その結果を前述の学会において発表した。自身の研究内容を広く外部に発信することで、研究の価値や何がユニークなのかを改めて再確認する機会となった。 最後に、開発会社の関係性に関する実証分析の結果と学会発表でいただいたフィードバックを元に、実証論文の執筆を行い、外部査読誌に論文を投稿中である。本論文において、企業は外部企業との関係性資産を築くことで、産業内多角化と業績の関係性に、正の効果を与えることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の当初の予定よりもデータの構築は順調に推移している。必要なデータの構築は当初予定よりも早く済んだため、それらのデータを用いた研究仮説の構築・実証も順調に進んでいる。具体的には、当初の予定である企業の関係性資産に関するデータの構築は夏までに完成し、そのデータをもとに分析を行った。その分析結果から、販売会社のゲームソフト開発の外部委託(アウトソーシング)割合は、産業内多角化と業績の負の関係性を低減させることを実証した。研究結果は学会発表を行い内容の修正を行った上で、論文執筆を年度内に終え、外部査読機関に投稿中である。加えて、企業内の人材に関するデータ構築も並行して行い、ゲームソフトの開発にかかわった人材と各人材の協働経験の回数などのデータを構築した。さらに企業の内部資源であるゲームの版権キャラクターやコピーライトに関するデータも追加的に取得し、データに追加しており、こちらも当初予定よりも順調に推移している。 現在、関係性資産や人材・内部資源などの企業に関する資源が、産業内多角化と業績に与える影響についての新たな仮説を構築している最中であり、当初予定通りに推移している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策として、当初の計画通り順調に推移しているため、当初の研究計画を実施していく予定である。具体的には、企業がゲームソフトを開発するにあたり自社の資源だけでなく他社の資源をどの程度活用しているのかを測定するため、他社のコピーライトの割合が産業内多角化と業績に与える影響について分析を行う。具体的には、企業が製品に占める他社のコピーライトの割合が大きい企業ほど、産業内多角化と業績の関係性に正の影響を与えることが推測される。何故なら、他社と共同開発することで企業は新たな産業内多角化を実行した際のリスクを低下させたり、著名な版権キャラクターを活用したりすることで製品の付加価値を向上させることができると推測されるからである。加えて、企業内の人材に関しても分析を行う。具体的には、開発経験が豊富な人材は企業にとっての戦略的資源であり、企業の戦略に影響を与えるとされている。そのため、複数のハードウェア・ゲームジャンルでの開発経験がある人材が多いほど、産業内多角化と業績の関係性に正の影響を与えると推測される。これらのより具体的な仮説の構築・分析を行うことを目標とする。 また、仮説とその分析結果は適宜学会発表などで報告を行い、内容をブラッシュアップするとともに、年度内に論文にまとめ、外部査読誌に投稿することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、当初計画では国際学会での発表を予定しており、そのための旅費費用として計上してあった。しかしながら、国際学会の発表内容の審査において不採択となったため、当初予定していた旅費分の費用が浮くこととなり、次年度使用額が生じた。 コンシューマゲーム産業に関するデータの構築が、当初計画よりも順調に推移しているため、次年度使用額は本年度分の助成金と合わせ、コンシューマゲーム産業に関する追加的なデータの入手とその入力作業に充てる予定である。
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