研究実績の概要 |
本研究では、産業内多角化と業績の関係における関係性資産の与える影響を明らかにすることを目的としている。関係性資産の影響を実証的に分析するため、令和1年度は大きく三つのことを実施した。 第一に、平成30年度に引き続き、本研究に必要なコンシューマゲーム産業のデータの構築を実施した。データはメディアクリエイト社の『ゲーム産業白書』より2018年から2019年までに発売されたゲームソフト約2,000本の販売会社や売上本数などのデータを追加入力した。 第二に、個別のゲームソフトの開発における、外部の協力関係にある企業の活用が業績に与える影響について分析・論文執筆を行った。企業外部のデベロッパー(ゲームの開発会社)の活用割合が高いほど、産業内多角化と業績の負の関係性を和らげる効果があることを実証し、その研究結果が「日本経営学会誌」に掲載された。 第三に、コンシューマゲーム産業における企業外部の関係性資産として、組織内外のキャラクター資源とそれを扱う知識を保有する製品開発者(ディレクター)が産業内多角化と業績の関係性に与える影響について仮説を構築・実証した。この研究の分析結果から、産業内多角化と業績の負の関係性に、組織内部のキャラクター資源と組織外部のキャラクター資源はどちらも産業内多角化と業績の負の関係性を低減させることを実証した。さらに、内部キャラクターを用いた開発経験のあるディレクターは、組織内のキャラクター資源をより効果的に活用することができることが実証されたが、外部キャラクターを用いた開発経験のあるディレクターは、必ずしも外部キャラクター資源を効果的に活用することができているわけではないことが実証された。この研究結果について論文を執筆し、現在学外誌に投稿・査読中である。
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