研究課題/領域番号 |
17K13794
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小沢 和彦 早稲田大学, 商学学術院, 講師(任期付) (30754428)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 経営学 / 組織変革 / モメンタム / 戦略的転換 |
研究実績の概要 |
ここでは2018年度に受理された複数の論文の中で、一つの論文に絞って説明する。テーマはダイナミック・ケイパビリティと組織変革に関する論文である。モメンタムは過去の経験に注目する概念であるが、過去の経験の影響を考える際に、その経験によって形成されたケイパビリティに注目する必要性を認識したために、このテーマについて検討している。 既存研究によると、ダイナミック・ケイパビリティは組織変革の源泉になるため、強いダイナミック・ケイパビリティを有する企業は組織変革を行うことが可能と想定されてきた。しかし、実際に環境変化に適応し続け、組織変革を行い続けることができる企業は必ずしも多くない。そのため、本論文ではダイナミック・ケイパビリティが衰退することで、それを有していた企業でさえ組織変革を行えていない可能性について検討している。既存研究においては、ダイナミック・ケイパビリティと競争優位性の関係、あるいは学習などのポジティブな側面が比較的強調されており、ダイナミック・ケイパビリティの衰退については深く論じられてこなかったといえる。 本論文ではUpper Echelonsパースペクティブを参考にしつつ、時間の経過とともにダイナミック・ケイパビリティの要素の1つであるセンシングが衰えることを論じている。それを通して企業のダイナミック・ケイパビリティも衰退するため、過去にダイナミック・ケイパビリティによって組織変革を行えた企業でさえも、将来に組織変革を行えない可能性があることについて明らかにしている。 また,本論文以外のプロジェクトとしては,経営者と組織変革の関係などについて2018年度に論文が受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織変革、戦略的転換、モメンタム、ルーティンなどをキーワードに、複数のプロジェクトを進めている。プロジェクトの数や進度については問題を感じておらず、いずれも概ね順調に進められており、一部の成果は論文として投稿中である。たとえば、経営者の交代と組織変革の実証研究については、論文の形にまとめて海外学術雑誌に投稿している。また、モメンタム仮説を拡張した組織変革の実証研究に関しても論文の形にまとめており、こちらも海外学術雑誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては以下の通りである。基本的には、これまで通り組織変革、戦略的転換、モメンタム、ルーティンなどをキーワードとして更に研究を進める予定である。これらについてはデータ・セットをいち早く完成させることが必須である。また、早稲田大学や他大の研究者からアドバイスを受けつつ、仮説、リサーチデザイン、インプリケーションなどについて逐次検討し、論文の完成度を高めて、その投稿及び掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表を通じて研究の途中段階でフィードバックをえる予定であった。しかし、学会以外のインフォーマルな場で、より活発に議論を行えるセミナーなどの機会、もしくは他大の研究者との意見交換の場が増えたことで、学会発表の重要性が当初よりも低下した。よって、当初と比べて、学会発表の必要性が低下したため、予算を次年度に繰り越すこととした。最終年度でもあるため,発表前の英文校閲などでも予算が必要になると考えている。
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