本年度は、学会等での研究報告として、(1)「地域ビジネススクールによる外部講座開設の取り組み」(企業家研究フォーラム第20回年次大会)、(2)「日本の新規株式公開企業の現状と課題、今後の展望」(日本証券経済研究所日米資本市場研究会、証券経済学会関西・中部合同部会)という3点を実施した。 はじめに、(1)は、2022年7月にオンラインで実施された企業家研究フォーラム第20回年次大会において、本学HBMSが実施している外部講座である「備後地域次世代ビジネスリーダー養成講座」の取り組みを整理した。さらに、①「ビジネススクールの地域貢献の在り方」、②「イノベーターは育成できるのか」(仮説1:外部講座の修了生は、生産性を向上させ、賃金を上昇させる、仮説2:ビジネススクールがない地域における外部講座の開設は、能力がある大卒者が外部講座を受講するため、大卒者の能力が低下する)という企業家研究における普遍的な課題を検討した。検証結果として、①十分な検証結果が得られず、②仮説1は支持されず、仮説2は支持された。 次に、(2)は、2022年7月に日本証券経済研究所日米資本市場研究会、2023年2月に証券経済学会関西・中部合同部会において、これまでの新規株式公開(以下、IPO)企業における研究課題(とりわけ、アンダープライシング)についてレビューしたのち、日本のIPOにおける「本質的な」研究課題とは何かについて明らかにした。制度的な歪み、行動ファイナンス的解釈、日本特有の慣習などが、これまでの日本のIPOのプライシングを歪めてきたことは明らかである。今後、制度変更の進展やIPO企業自身のファイナンスリテラシーの向上などが求められる。
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