研究課題/領域番号 |
17K13800
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐野 宏樹 立命館大学, 経営学部, 准教授 (70779628)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 共同開発 / 協力ゲーム / 在庫回転率 / 売上サプライズ |
研究実績の概要 |
平成29年度は、2つの小課題への取り組みを独立に進める形で研究を進めた。第一に、競合する製造企業の共同開発関係の形成について、協力ゲーム的モデルの分析結果をもとに検討した。関連する先行研究を検討したところによると、競合企業の協力関係の形成を分析するためにこれまで提案されてきたミクロ経済学的モデルは、協力関係の形成を単純化して考えているものが多く、他の検討要因と比較すると、協力関係の形成過程や安定性についてはあまり検討が深められていないようである。そこで本研究では、協力ゲーム的モデルの均衡概念を参考にしてモデルを構築し、共同投資関係の形成のために発生する追加的な調整コストと、競合企業の市場競争力の非対称性が、均衡的な共同投資関係の形成に与える影響について考察した。第二に、先行研究において提案されている、小売・製造企業の在庫管理の効率性を説明する回帰モデルについて、日本企業の財務データをもとに検討を行った。この回帰モデルは、在庫管理の効率性を示す指標である在庫回転率を被説明変数とし、説明変数として粗利率、資本集約性、売上サプライズをおくものである。本研究では説明変数の一つである売上サプライズに注目し、日本企業が公表している実際の売上予測データを用いて、先行研究で採用されている指数平滑法による需要予測値をもとにした売上サプライズ変数の妥当性を評価した。本研究における分析結果によると、指数平滑法をもとにした売上サプライズ変数を用いると回帰係数の推定値がバイアスを持つ可能性が示されたものの、どちらの変数を用いてもその他には推定結果に大きな違いは見られないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度に計画していたフィールド調査がやや遅れている。理由としては、フィールド調査の土台とするための分析モデルの構築に予定よりも時間がかかったことが挙げられる。基本的な分析モデルの設定は平成30年度5月の時点で出来上がっているので、この遅れは平成30年度において取り戻せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成29年度に行った協力ゲームのモデル分析の研究に続き、フィールド調査によって得られた情報を取り入れながら、製品設計企業と受託製造企業の垂直的関係を表すモデルの構築と分析を進めていく予定である。その際、平成29年度に行った企業の在庫管理に関する実証分析に続き、新製品の市場投入のタイミングや数量といった事項もモデルの構成要素として検討していきたいと考えている。
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