研究課題/領域番号 |
17K13811
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
武谷 慧悟 早稲田大学, 商学学術院, 助手 (60769917)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サービス・リカバリー / サービス・マーケティング / 苦情 / 補償 / 説明 / 顧客満足 / グローバル・マーケティング |
研究実績の概要 |
本研究課題の目標は、サービス・リカバリー戦略(i.e. 苦情対応戦略)を理論的に体系化するとともに、実務に対する具体的示唆を提示することである。こうした目的を果たすべく、平成29年度はその第一段階として、サービス・リカバリーを行う際にサービス提供者が注意を払うべき要因について検討を進めた。具体的には、サービスの失敗やサービス・リカバリーに対する顧客反応に影響を及ぼす調整要因について既存研究のレビューを行った。EBSCOなどのデータベースを活用して論文を収集し、レビューを進めた結果、顧客の個人的要因(性年代、パーソナリティ、文化、政治的信念など)、企業とのリレーションシップ要因(感情的コミットメント、リレーションシップのタイプ、過去の利用経験など)、文脈的要因(サービスの失敗の性質、苦情を申し立てる環境の物理的特徴、他者の存在など)といった極めて多様な要因の存在が明らかになった。 上記の既存研究のレビューと並行して、30年度に実施予定であった、最適な金銭的補償の方法を明らかにするための実証研究を一部前倒しで進めた。こちらの成果については、2018年6月の日本商品学会全国大会で発表し、後に論文化する予定である。 また、学会での議論をきっかけとして、グローバル・マーケティングの視点を付加する形で当初の研究計画を発展させることもできた。現在、そちらについては共同で論文執筆を進めており、来年度以降の国際学会での発表も視野に研究を展開させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、29年度にレビュー論文を執筆し、査読付き学会誌に投稿する予定であった。しかし、研究成果をより幅広く発信できる可能性が生じたことなどにより、論文投稿を一度見送ることにした。まずはそちらを実現させ、その後に研究成果の重複をなくして学会誌に改めて投稿することが望ましいと考えている。また、29年度にもう一つ予定していた、苦情行動に関する消費者調査については、既存研究のレビューと当初の研究計画の発展を受けて見直しが必要だと判断したため、実施していない。以上のように、当初想定していなかった事態が生じたことにより、研究計画を一部変更したり、未実施の課題が残ることとなった。 しかし、こうした軌道修正は、必要かつポジティブなものだと認識している。また、30年度に実施する予定だった研究課題の一部を前倒しで実施できたこと、学会での議論を通じて当初の研究課題を発展させ、共同研究に結実できたことなどを総合的に考慮すると、1年目の研究の進捗状況としては「2 おおむね順調である」の評価を与えることができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、29年度の研究成果を論文や学会発表等で発信していく予定である。また、29年度に実施予定だった調査の見直しに伴い生じた資金については、研究計画の発展により新たに必要となった調査(仮想シナリオを用いた実験を3回程度実施予定)などに活用する。各年度の個別的研究課題を達成することと同時に、3年間のトータルとして体系的な研究成果を出せるよう、注意深く進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度に実施する予定だった調査を見送ったことにより、調査委託費、データ解析に必要なソフトウェア等の購入費が未使用となったため、大幅な次年度使用額が生じた。 29年度の研究の発展を受けて、30年度は当初の研究計画にはなかった調査を実施することになったため、前年度の予算はそちらに活用する予定である。また、所属する研究機関の変更に伴い、新たな研究環境を構築する必要も生じたため、そちらにも有効活用したい。
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