研究課題/領域番号 |
17K13813
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研究機関 | 亜細亜大学 |
研究代表者 |
平安山 英成 亜細亜大学, 都市創造学部, 准教授 (10584419)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マスメディア広告 / アジェンダ設定機能 / 広告効果 / 東京五輪 / スポーツ・スポンサーシップ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アジェンダ設定機能に関するマス・コミュニケーション研究の成果をマスメディア広告に援用するものである。マスメディア広告のアジェンダ設定機能とは、情報の受け手の「認知」段階に作用することによって、何らかのアジェンダ(テーマや話題)を設定し、「いかにそのテーマやその範囲を限定するか」に着目した新しい広告効果研究である。 本研究では、主に2つのテーマの文献研究が行われた。すなわち、(1)アジェンダ設定機能分析の深化とマーケティング領域への適用、(2)スポーツ・スポンサーシップ特質分析の深化である。 マス・コミュニケーション研究領域で広く分析されている「属性アジェンダ」の議論をもとに、広告物の作成と効果的なアジェンダ設定について分析を行った。この「属性アジェンダ」とは、アジェンダ設定機能の質的側面を分析したものであり、諸属性がどのように送り手から受け手に転移したのか、また、受け手はいかに転移した諸属性をもとにして対象を再構築したのかについて明らかにすることが可能となる。そのため、アジェンダ設定を前提とした広告物作成を考慮する際、有益な示唆を得られると考えられる。 次に、「スポーツ・スポンサーシップ特質分析の深化」では、スポーツ・スポンサーシップをアライアンスの一形態として捉え分析を行った。スポンサー企業は、スポーツ組織と提携することで、排他的にそのプロパティを使用できる権限を入手できる。そして、現代的なスポーツ・スポンサーシップの特質とは、マスコミや消費者などによってその大会のアジェンダが設定されることにより、スポーツ大会を一種の有力なコミュニケーション・チャネルとして認識し、その大会のスポンサーとなることによって、排他的にそのチャネルを利用することが可能であるということが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、マスメディア広告によって「東京五輪」というテーマが強調されるほど、その受け手である消費者にとっても重要性が高まるという仮説のもと研究が行われた。五輪に関するマスメディア広告を行う際、企業はスポーツ組織との間で「スポーツ・スポンサーシップ」を締結する必要がある。スポンサー企業が提携する主な目的とは、自社ブランドの認知度向上だけではなく、スポーツ組織のイメージを自社ブランドに転移させることであることが判明した。また、「アンブッシュ・マーケティング規制法」によって、スポーツ組織とスポンサー企業の権利が、ただ乗り行為から保護されるメカニズムについて考察を行った。さらに、アジェンダ設定機能研究と近接関係にある「フレーミング研究」との関係について考察を行った。そして、「属性アジェンダ」の研究成果をもとにアジェンダ設定を前提とした広告表現について考察を行った。 これらの研究成果は、日本経営診断学会2018年度関東大会および日本経営診断学会第51回全国大会、日本消費経済学会2018年度関東大会および日本消費経済学会第43回全国大会において報告を行った。学会報告における研究成果は紀要などに投稿した。 本研究では、2020年東京五輪の開催2年前の時点におけるマスメディア広告のアジェンダ設定に対する貢献について調査する予定であった。しかし、該当するマスメディア広告自体の絶対数がまだ少ないこと、また現在マスメディアを通じてアジェンダ設定に貢献しているのは、NHKなどの放送事業者によって製作・放送された番組であると考えられるため、総合的に判断し本年度の調査を延期することとした。 本研究では、東京五輪のゴールドパートナー企業である「みずほフィナンシャルグループ」を調査対象とし、スポンサー企業の実際の取り組みに関するヒアリング調査を行い、多角的な研究となるよう努めた。
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今後の研究の推進方策 |
文献研究では、以下の項目について重点的に行われる。まず、当該消費者の関与が高いと仮定すると、消費者反応プロセスは認知、態度、行動の順番に段階を経ると考えられ、アジェンダ設定機能は、認知段階に作用するという特質を持つ。しかし、それに続く段階への効果は想定されていないため、「プライミング効果」に着目し、態度段階への効果を分析する。 また、Kotler & Lee(2005)が提唱する「事業活動と企業の社会的責任の融合」やPorter & Kramer(2011)が提唱する「共通価値の創造(CSV)」の議論を援用し、しばしばスポンサー企業にとってオリンピックよりもコミュニケーション・チャネルとしての魅力度に欠くとされるパラリンピックのアジェンダ設定について分析を行いたい。 調査研究では、非オリンピック・イヤーにおけるマスメディア広告のアジェンダ設定機能効果に着目し実施する。受け手アジェンダの分析を行うために、パネル調査データによる分析を行う。この調査で対象とする受け手アジェンダは、「個人内」とする。従来マスメディア広告の主たる効果とされてきた「補強効果」と区別するために、東京五輪に対する関与があまりにも高すぎる場合(例えば、本人、もしくは親族や知人が大会関係者や選手である場合など)は、被験者から除外する。内容分析は、テレビでは、民放キー局5局の夕方7時から10時の間に放送されたCMを対象とする。 また、2018年度に行う予定であった調査は、東京五輪の「プレ大会」と位置付けられることも多い第9回ラグビーワールドカップ(開催期間:2019年9/20~11/2)を対象としたものへと変更する。 上記の研究成果は、日本消費経済学会第43回全国大会などで学会報告を行う。更に、学会報告における研究成果は、日本経営診断学会や日本消費経済学会をはじめとする学会誌に論文投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、本年度計画されていた調査を延期したことおよびそれに伴う人件費が支払われなかったことに起因する。未使用の資金は、東京五輪の「プレ大会」として位置づけられることが多い第9回ラグビーワールドカップにおいて調査を行うことで対処する。
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