本研究のテーマであるマスメディア広告のアジェンダ設定機能とは、マスメディア広告によって、何らかのアジェンダ(テーマや話題)が強調されればされるほど、その受け手である消費者もそれらの重要性を高く位置づけるという仮説のもと、研究を行った。 本研究では、「東京五輪2020」を対象とし、調査することを計画していた。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、開催が延期されたり、延期後の開催決定が不透明であったこともあり、スポンサー企業による五輪関連のマスメディア広告の出稿量が極めて少なかったことがあげられる。また、メディア環境の変化が著しいこともあり、マスメディア広告自体の出稿量に影響があったとも考えられる。 これらの状況を踏まえて、本年度は、インタビュー調査および文献収集とアンケート調査を実施した。まず、マスメディアによるアジェンダ設定の成功事例として考えられる長野五輪(1998年開催)において、主導的役割を果たした各種団体の後任組織である長野県教育委員会事務局スポーツ課と、北海道・札幌五輪(2030年招致目標、2023年12月招致断念)の招致活動の中心的役割を果たした札幌市スポーツ局招致推進部および北海道環境生活部スポーツ局スポーツ振興課オリンピック・パラリンピック連携室にインタビュー調査を実施した。また、長野県総務部行政情報センターと北海道庁総務部行政文書課情報センターにて資料収集を行った。その際、千葉商科大学サービス創造学部の仁平京子准教授に学外協力者としてご助力いただいた。さらに、2023年3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、マスメディアによってうまくアジェンダ設定された大会であると考えられる。1年後の同時期に開催された「カーネクスト 侍ジャパンシリーズ」もマスメディアを主とした大会であったため、両大会を対象とし、アンケート調査を実施した。
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