研究課題/領域番号 |
17K13814
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
三井 雄一 九州産業大学, 商学部, 講師 (00782145)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 広告効果 / 無関連感情 / 関連感情 |
研究実績の概要 |
平成29年度では研究実施計画に基づき、4月より先行研究のレビューを開始し、関連感情・無関連感情の先行研究における概念の扱いや測定項目について整理を行い、当初計画どおり7月までに心理学、マーケティング分野で当概念を扱う研究の大まかなレビューを完了している。 8月からは実際に実験で用いる刺激や質問項目についての検討を行い、研究会等を通して実験計画の策定を開始した。実施計画では想定していなかったが、広告効果モデルに関連感情と無関連感情を取り入れ、実験的に検証している先行研究が少なくともマーケティング分野では見当たらず、仮説モデルを構築する際の知見が得られなかった。そのため計画を変更し、仮説モデルを構築するための事前の検証として、9月より無関連感情の導出方法、関連感情の影響測定の方法などを整理したうえで、「事前に誘導した無関連感情の状態によって関連感情によるマーケティング指標への影響に差が生じるのか」というテーマのもと実験を開始した。実験で得られた結果は、11月のKSMS International Conference、12月の日本商業学会全国研究報告大会にて発表している。学会で得られた指摘を受け、当実験では不十分な点が数点確認できている。 12月から3月にかけて実施計画では、「無関連感情による関連感情表出への影響について」というテーマでの調査を行う予定であったが、先の学会等においていただいた指摘や不明確な点などを修正、再検討し改めて実験を行うための準備を行うことを優先事項として行った。研究会等を通じて再調査の実験で使用する感情誘導のための刺激、質問項目などの準備も整い、平成30年度4月より改めて実験を開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29年度4月から7月までは計画どおり順調に研究は進んでいたものの、8月からは、先行研究のレビューを行った結果、無関連感情と関連感情を1つの実験内で測定し、その影響を調査している研究がほとんど見られなかった。そのため、実施計画で予定していた無関連感情の関連感情への影響を測定するにあたり、心理学等で行われている事前の感情誘導の手法、広告効果研究で用いられる刺激により生じる感情状態の測定、の2つの研究手法を取り入れて実験を行った。当初計画では予定していなかった「事前に誘導した無関連感情の状態によって関連感情によるマーケティング指標への影響に差が生じるのか」というテーマのもと、そもそも異なる無関連感情状態下において関連感情によるマーケティング指標への影響に差があるのかを明らかにするため実験を行った。 上記理由より、実施計画上予定外の実験を行ったことで進捗に若干の遅れが生じている。特に、12月以降に予定していた、無関連感情による関連感情表出への影響に関しての調査は次年度へ繰越したため、全体としては次年度に一四半期分の遅れが生じることとなる。この点については、研究目的である「広告効果モデルへの関連感情、無関連感情の双方を組み込んだモデルの構築」に向けた重要な調査であり、当該調査を経ることによって平成30年度に予定していた研究の実施速度はむしろ早まるものと考えらえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、実施計画どおり、広告効果測定モデルとして本申請者が提示したモデルに関連感情と無関連感情を組込み、より精緻なモデル構築を目指す。平成29年度での無関連感情の状態による関連感情のマーケティング指標への影響調査の実験方法について再度精査し、4月から7月の間に再度実験を行う。 その後の予定としては、8月からは前年度の実験手法を精査したものを踏襲し、マーケティング環境下における無関連感情による関連感情表出に関する調査、および、マーケティング環境下における関連感情・無関連感情の情報処理への影響について、質問紙調査をもちいて実証分析を行う。本調査については前年度の蓄積があるため12月までに完了する予定である。 1月以降は、広告効果モデルに関連感情・無関連感情を組み込み、新たなモデルの構築 を行う。変数や測定指標が多いため、複雑なモデルとなることが想定され、プレテスト等を踏まえて仮説の設定 には十分に注意をする必要がある。本調査では感情測定指標、マーケティング指標の質問数よりサンプル数はお よそ600程度を想定する。調査は質問紙による実験的検証を行う。分析についてはAmosを用い、モデルとしての 適合を検証する。また、同時期に学会、もしくは 研究会にて本研究についての発表を行う予定である。昨年末の学会発表の指摘、批判等を踏まえてモデルの調整、適合度の向上を行い、モデル の精緻化に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度実施を予定していたインターネット調査の委託費が、研究の過程で異なる実験を行うこととなり支出を行わなかった。予定外の実験においても、実験室による調査であったため、当初予定していたインターネット調査費分の執行もなかった。 平成30年度については、出張費(学会発表のため):\100,000、図書購入費:\60,000、インターネット調査委託費・実験実施費:\500,000、その他(印刷複写費、文具費等):\20,000、合計:\680,000の支出を予定している。
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