研究課題/領域番号 |
17K13814
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
三井 雄一 西南学院大学, 商学部, 准教授 (00782145)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生理的測定指標 / 無関連感情 / 皮膚電位系 |
研究実績の概要 |
昨年度、4月に行った学会発表およびその後にいただいたご指摘より、関連感情と無関連感情を同一実験内で測定することについての問題が明らかになった。そのため、当初予定していた質問紙調査による実験方法の模索を行った。しかし、質問紙による感情測定はその性質上被験者に自己の感情を事後に認識させることになるため本来の無関連感情の概念定義から逸脱した変数を測定しかねない問題が払拭できなかった。 そこで、先行研究のレビューや、研究会等を通して質問紙調査そのものの見直しを行い、結果として、皮膚電位計を用いた生理的測定指標を用いることとした。感情概念の定義や測定には様々な種類が存在し、当初予定していた質問紙調査では感情を「嬉しい」「楽しい」「恐い」などの基本感情により構成されるものとして捉えようとしていた。一方で、PADモデルに代表される感情を2次元、3次元で捉える方法も存在し、皮膚電位計により測定ができるのはこのうちの「覚醒」の程度である。 感情の時系列変化を測定できることで質問紙調査で問題となった課題は解決できるものの、感情の1次元のみを測定することは、先行研究の知見を援用する際には十分な注意が必要であると思われ、その点については昨年度よりレビューをすすめてきた。 また、実験のプレテスト等を行った結果、問題なくモデルの検証ができることが確認されたため、本年度の研究にとって有益な情報の整理ができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和1年度に所属大学の移動を行ったこと、および当初予定していた実験手法と測定しようとしている概念との適合について大きな問題が生じたことが研究遅延の最大の理由だと考える。 特に、後者の影響は大きく、実験手法の見直し、測定指標の見直し等根本的な改善が求められる事態となった。結果としては感情の測定指標の変更及び、実験手法を質問紙調査から生理的指標の測定へと変更することで当初懸念された課題を解決できることが確認できた。 全体の進捗への影響としては、先行研究レビュー範囲の追加・変更が求められる点と実験の再実施が求められるが当初の研究課題に対する成果を本年度に出す目途はたてられたという状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、本研究における感情概念、感情測定の変更に伴う先行研究のレビュー範囲の拡大・変更が求められる。先行研究のレビューをまとめたうえで成果として公表したいと考えている。 次に、新たな実験の実施である。生理的測定は質問紙調査とことなり一人一人実験を行いデータを採取しなければならない。そのため十分な実験データの収集には相当の期間を要する。昨今の状況を鑑みて、実験が実施可能になれば直ちに着手できるよう準備を進めたい。 最後に成果の公表についてであるが、学会等の開催の目途が立たない現状においては基本的に成果報告は論文の形で行いたい。レビュー論文および実験結果の公表という形で年度内の投稿・採択を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の学会発表およびその後の研究会において、当初予定していた感情の測定指標と質問紙調査という測定方法の問題についてご指摘いただいた。実験を進めるうえで重大な問題が明らかとなり、昨年度に支出予定であった調査費用の支出が行われなかったことが次年度使用額発生の大きな原因である。 本年度においては、変更後の皮膚電位系を用いた生理的測定指標の測定を行い、データ収集を行うための費用としての支出が使用計画の大部分を占める予定である。加えて、感情の測定指標、測定方法を変更したことによる先行研究のレビュー範囲の変更・追加に伴う書籍費としても一部使用支出予定である。
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