本課題の最終年度では、これまでの調査で先行研究から導かれる仮説と検証結果が乖離していることを踏まえ、新たな着眼点として、先行研究では整理されていなかった「気分」と「情動」という2つの概念を加えることにより選考研究を再整理した。さらにその内容を論文「感情が情報処理に与える影響に関する考察: 認知対象との関連性と強度による感情の類型化の視点から(2021 西南学院大学商学論集)」として公表している。 研究期間全体を通しては、関連感情と無関連感情の広告情報処理に対する影響に関する先行研究を整理し、2017 KSMS International Conferenceにて報告を行っている(タイトル:「The effect of relevant affect and irrrevant affect on advertising information processing」)。また、2017 日本商業学会 第7回全国研究報告会での報告では(タイトル:「関連感情と無関連感情の広告情報処理に対する影響に関する考察」)、先行研究の知見を踏まえて、関連感情・無関連感情を組み込んだ仮説モデルの提示を行った。 これらの先行研究の整理および学会報告でいただいたご指摘・ご意見等を踏まえて、事前に生起した無関連感情が関連感情が広告情報処理に与える影響に対して交互作用をもつという仮説のもと、2019年 日本商業学会 九州部会にて報告を行っている(タイトル:「事前感情生起時の広告情報処理に対する関連感情の影響に関する予備的考察」) 研究実績全体としては、当初の研究計画どおりに実験結果が得られなかったことから進捗の遅れと計画の見直しを余儀なくされたが、結果としては先行研究に重要な視点が欠落していることによる先行研究間での結果の相違や再現性の欠如に繋がっていることを明らかにでき、一定の学術的貢献をあげているものと考えている。
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