品質コストマネジメントは、各品質コスト項目間のトレードオフ関係を基盤とするPAFアプローチと呼ばれるフレームワークの元で展開してきた。このフレームワークが有効に機能するためには、トレードオフ関係に当てはめて分析を行う必要があり、その際に品質をコストとして認識する過程や、コスト項目間の分類について大きな困難が生じることがある。個別の適用実態に合わせた変更を強いられることになるため、結局は理論的な想定と現実的な効果が乖離してしまう。そこで、本研究は、トレードオフ関係に依拠しない品質コストマネジメントについての調査・検討を行った。調査については、イギリスを対象とした。これは、プロセスコストモデルと呼ばれる、PAFアプローチとは異なる考え方を持つフレームワークが存在し、公的機関によりガイドライン化され、実際の適用事例が存在するためである。 平成30年度は、昨年度の実施状況報告書で述べた理由により遅れていた資料調査について、アプローチを見直し、重点的に行なった。その副次的な結果として、先行研究では触れられていない資料の発見を実現することができ、これにより今後の研究における新たな展開の必要性が生じた。 研究成果については、プロセスコストモデルを軸に、従来トレードオフが担っていた機能をどう代替・改良しているのか、それぞれの特徴を考察・検討した。本年度の研究成果については、国際学会で発表するとともに、当該学会のProceedingsの形で公表した。イギリスでのサーベイ時ないし当該学会報告時における各種アドバイスをもとに、当該Proceedingsのブラッシュアップを図り、英語論文としてのPublish Paper化を目指す過程にある。
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