測定属性の理論形成に関する実績の一部として「農業法人を取り巻く広範な利害関係者に関する情報開示事例 ―Beer Experience株式会社への聞取調査を基礎として―」と題する論文を2022年12月に『弘前大学経済研究』で公表した。近年、持続可能な社会発展・環境保全を行う企業への評価の高まりから、多様な利害関係者の要請に応える情報を提供することの重要性が増加している。Porter and Kramer(2011)が提唱するCSV(Creating Shared Value)の考え方を基礎として社会価値と経済的価値の両立を目指す経済主体と資本関係のある農業法人における個別事例をもとに広範な利害関係者に対する非財務情報開示に関する検討を行った。当該企業が開示する里山の多様性の育成といった社会との共創価値は、金額表示されることはなく、また金額表示されるべきものでもない。しかしながら、任意の非財務情報を用いた広範な利害関係者との対話は、効率的な資源配分にかかわる問題となりうるものであると考えられる。 財務指標の開発に関する実績の一部として「IFRSにおける利益情報の集約及び分解に関する開示思考」と題する論文を2023年2月に『人文社会科学論叢』で公表した。IAS 1 (International Accounting Standards No.1)の公開草案「全般的な表示及び開示(General Presentation and Disclosures)」は、財務報告におけるコミュニケーションの改善に関するプロジェクトの一環であり、利益情報を集約(aggregation)及び分解(disaggregation)、特徴を共有する項目についての識別が議論となっている。学説の整理を基礎とした開示の在り方及び財務指標の開発に資する研究である。
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