研究課題/領域番号 |
17K13821
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
市原 勇一 京都大学, 経営管理大学院, 特定助教 (80781830)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 両利きの経営 / マネジメント・コントロール・システム / 管理会計 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、両利きの経営を実現するために、マネジャーがどのようにマネジメント・コントロール・システム(MCS)を用いているのかを明らかにすることである。平成29年度は、(1)両利きの経営と関連した管理会計研究の文献レビュー、および(2)両利きの経営が実現されている、またはその実現を目指しており、そのためにMCSが用いられている企業を対象とした定性的調査を実施した。それぞれの概要は以下の通りである。 (1)両利きの経営を直接扱った管理会計研究が近年徐々に行われつつある。これらの研究はコンティンジェンシー・アプローチを用いた定量的研究であり、活用を重視している企業、探索を重視している企業、活用と探索を両立させている(つまり両利きの経営を実現している)企業のそれぞれでどのようなMCSが適合的に利用されているのかについて明らかにしている。しかしながら、これらの研究ではMCSがどのようなプロセスを経て両利きの経営を実現しているのかという部分については十分に明らかにされていない。特に、両利きの経営では活用と探索の分化と統合が重要であると指摘されているが、MCSがどのように活用と探索の分化と統合を達成しているのかについての知見が不十分である。両利きの経営を直接扱った研究ではないが、Dent(1987)やSimons(2010)はこの問題に示唆に富む知見を提供している。つまり、管理の幅と責任の幅を調整することで、活用を重視する部門と探索を重視する部門の分化と統合が実現可能なことを示唆している。 (2)文献レビューの結果をふまえて、建設機械メーカーおよび不動産会社の2社に対する定性的調査を実施した。どちらの事例においても、管理会計システムが活用を重視する部門と探索を重視する部門の分化を促進すると同時に、それらの部門を統合するような役割を果たしていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
定性的調査において当初調査を予定していた3社のうち、2社が調査先の都合により中断しており、再開の目処が立っていない状況である。不動産会社への調査は予定通り実施ができ、また代替的なリサーチサイトとして建設機械メーカーの協力を得たが、当初予定していたリサーチサイトへの調査が実施できなかったため、全体の計画からは「やや遅れている」と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は現在調査を行っている2社の研究をさらに推し進めるとともに、現在調査が中断しているリサーチサイトの調査再開および新たなリサーチサイトの獲得と調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初調査を行う予定であった調査先で調査が中断したリサーチサイトが発生したため、次年度使用額が生じている。 今年度は昨年度調査を実施した2社に加えて、現在中断しているリサーチサイトの調査再開および新規のリサーチサイトへの調査を行うため、主にこれらの調査に係る旅費として使用する予定である。
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