研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)銀行の影響力と社債利率の関係および(2)銀行借入対社債比率と会計上の保守主義の関係を分析することによって、債権者間利害対立が企業の負債コストや会計数値の特性に与える影響を明らかにすることである。メインバンクに代表される大口債権者については、経営者に対する効果的なモニタリングというメリットと、社債権者など他の債権者を犠牲にする機会主義的行動というデメリットの両方が指摘されている。銀行と債権者の利害対立の有無やその影響を多面的に明らかにすることができれば、会計研究だけでなく他の研究分野に対する大きな貢献となるであろう。さらに本研究の実証結果は、わが国の債権者保護の制度や、財務報告がコーポレートガバナンスに与える影響を考える上で重要な示唆を与えるものと期待される。 こうした目的を達成するため、平成30年度は(1)銀行の影響力と社債利率の関係についてHow Do Bank Relationships Affect Bond Spreads?という論文を執筆し、2018年10月に一橋大学で行われた日本経営財務研究学会・第42回全国大会で報告を行った。この論文は、先行研究である[Datta, S., Iskandar-Datta, M., and Patel, A., 1999. Bank monitoring and the pricing of corporate public debt. Journal of Financial Economics 51, 435-449]を拡張したものであり、(1)銀行との関係(bank relationship)は社債スプレッドを上昇させること、(2)一方でメインバンクの存在は総じて社債スプレッドを低下させること、(3)メインバンクからの借入比率と社債スプレッドの関係は非線形(U字型)になっていることが示唆された。
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