研究実績の概要 |
本研究の目的は、銀行の影響力と社債スプレッド(社債利回りと国債利回りの差額)の関係を分析することによって、債権者間利害対立が企業の負債コストに与える影響を明らかにすることである。メインバンクに代表される大口債権者については、経営者に対する効果的なモニタリングというメリットと、社債権者など他の債権者を犠牲にする機会主義的行動というデメリットの両方が指摘されている。 2020年度は、2020年1月にJournal of Corporate Financeに投稿した「The effect of bank relationships on bond spreads: Additional evidence from Japan」という論文を、同誌からの査読コメントに基づいて修正した。本論文において、銀行はメインバンクとサポートバンクの2つに分類される。メインバンクとは、社債発行企業にとって最大の貸し手であるだけでなく、十大株主でもある銀行を指す。一方、サポートバンクとは、社債発行企業に資金を貸し付けているものの、十大株主ではない銀行を指す。重回帰分析の結果、メインバンクは社債スプレッドに影響を与えないものの、サポートバンクは社債スプレッドを上昇させることが明らかになった。こうした結果は、日本の社債投資家がサポートバンクによるホールドアップ問題を懸念していることを示唆する。本論文は、2度の修正を踏まえて2021年3月にアクセプトされ、すでにオンラインでは公表されているが、紙媒体としてはJournal of Corporate Finance, Volume 68, June 2021に掲載される予定である。 2018年度に日本経営財務研究学会で報告をし、その論文が2020年度に海外の査読付ジャーナルにアクセプトされたことが、本研究の期間全体における成果である。
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