研究実績の概要 |
本年度は文献調査を中心に研究を進めるとともに、実証分析を行い、それらの研究成果を学会にて報告した。申請者は、今年度までに金融危機時において投資家の意思決定が変化することを確認している。具体的には、金融危機状況下において財務安全性に関する情報に資本市場の関心が高まることなどを発見した。本研究では、さらに収益性に関する情報に関しても変化が生じると考える。 資本市場に基づく実証研究では様々なモデルが適用されてきた。その中でも、回帰モデルは多くの場合に利益資本化モデルから導出され、利益情報の有用性の検証に用いられてきた。この実証モデルは、Lev.B and Zarowin (1999). The Boundaries of Financial Reporting and How to Extend Them. JournalofAccounting Research,37, 353-385.などによって用いられ、これまでに多くの研究結果が蓄積されてきた。 一方で、Easton and Harris (1991). Earnings as an Explanatory Variable for Returns. Journal of Accounting Research, 29, 19-36.は別のモデルを導出し、利益の差分情報ΔEにも有用性が存在することを明らかにしている。 申請者はこのモデルの実証テストを実施し、説明変数である利益変数Eと利益差分変数ΔEに高い相関があり、利益資本化モデルにおける利益反応係数β1の推定結果およびその解釈が誤っている可能性があることを発見し、日本経営分析学会第 34 回年次大会(2017年4月)において報告テーマ「意思決定モデルの選択と欠落変数バイアス」として報告した。
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