研究課題/領域番号 |
17K13834
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
井上 秀一 追手門学院大学, 経営学部, 講師 (00785909)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 管理会計システム / ミドルマネジメント / 医療機関 / 吸収役 / 双方向の窓 / 会計化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,医療機関の管理会計システムにおいて,各診療科部長や看護師長をはじめとしたミドルマネジメントが,トップと現場の間でどのように組織内調整を行っているのか明らかにすることである。 これまで日本を含むOECD諸国では,公的機関の効率的な経営を目的として,ニュー・パブリック・マネジメントと呼ばれる一般企業で行われている経営手法を公的機関に導入する政策的な試みがなされてきた。その一環として,医療機関においても管理会計システムの導入による会計的管理が行われてきた。会計的管理が医療機関の業績向上に資するという指摘もあれば,一方で会計的管理の導入が医療活動を歪めてしまうという「会計化」(Power and Laughlin, 1992)の問題も指摘されてきた。 1年目にあたる本年は,そのような文脈におけるミドルマネジメントの役割について,Laughlin et.al.(1994)が提唱する「吸収役」と,Llewellyn(2001)が提唱する「双方向の窓」を鍵概念として文献レビューを行い,調査データを分析するための理論的なフレームワークの構築を行った。 文献レビューの結果,ミドルマネジメントは,トップに対して会計情報を用いて説得・交渉を行うことで現場への会計的な影響力を吸収し,一方で,現場に対して会議や非公式のミーティングを主とした人的調整を行うことで,トップの示す戦略を実現しようと試みていることが判明した。 しかしながら,どのようなプロセスで「吸収役」や「双方向の窓」の役割が果たされているのかについてはブラックボックスであり,調査の必要性があることも示された。そこで,次年度以降は,インタビュー調査や参与観察をはじめとしたin-depthの調査を行い,このブラックボックスを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書の通り,1年目にあたる本年は,文献レビューを中心として,調査データを分析するための理論的なフレームワークの構築を行った。理論的なフレームワークの構築は,次年度以降のin-depthの調査によって得られたデータを分析するための基礎的な手続きであり,今後の研究に必要不可欠なものである。加えて,複数機関との合意も得られており,計画どおりの進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書通りに進める予定であるが,今後は理論的なフレームワークのさらなる洗練を図りながら,in-depthの調査によって得られたデータを分析する。その中間結果について,学会報告や論文出版を行いながら,内外に向けて発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画書作成時点では,複数機関への調査協力の合意や調査開始時点が未定であり,決定した時点が本年度末であったため,事前打ち合わせや調査のための旅費等を使用することが出来なかった。それらの費用については次年度に使用する。また,研究成果の発信や情報収集を目的として内外の学会への出張旅費等に使用する。
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