本研究の目的は,様々に企業が開示する情報の中でも特に定性情報に注目し,その定性情報をテキストマイニングの手法を用いて実証的に分析を行い,その経済効果を明らかにすることである。最終年度ではこれまで用いていた有価証券報告書のMD&Aセクションのデータ(2004年から2014年,東証一部上場企業)を拡張し,2015年から2017年までのデータも取得した。そのデータを使い,新たに機械学習のアプローチを活用した分析モデルであるトピックモデルを用いて,MD&A情報の内容を分析した。分析の結果,以下のような発見事項があった。 ・2004年から2017年にかけて開示されているMD&A情報から抽出されるトピックに大きな変化はみられない。 ・増益企業と減益企業を比較すると,増益企業は経営成績についてのトピックが代表的であり,減益企業は増益企業よりはリスクについてのトピックが代表的である割合が高い。 ・IFRS基準採用企業は経営成績についてのトピックよりは事業戦略についてのトピックが代表的である企業の割合が高い。一方で日本基準採用企業は経営成績についてのトピックが代表的であり,SEC基準採用企業はリスクについてのトピックが代表的である。 これらの分析結果について執筆した論文「トピックモデルを用いたMD&A情報の分析」について,2019年9月に神戸学院大学で開催された日本会計研究学会第78回大会において口頭発表を行った。参加者からコメントをいただき,それをもとに現在修正を行っている。
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