研究課題/領域番号 |
17K13837
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
苗 馨允 宇部工業高等専門学校, 経営情報学科, 助教 (60749414)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 会計制度の変遷 / 周辺制度の発展 / 中国におけるリース会計 / 中国における金融商品の測定 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国では1992年から現在にかけて、IFRSとのコンバージェンスを達成するための一連の改革及び中国固有の周辺制度とアングロ・アメリカン会計モデルとの摺り合わせを解明することである。 平成29年度は、1992年から現在までの中国会計制度の変遷及び周辺制度の発展に関する多様な公開資料を集め、また学術文献をレビューした。研究成果は次のように公開した。 1.2017年9月に開催された国際会計研究学会第34回研究大会で「中国におけるリース会計の変遷――借手の会計処理を中心として」というテーマで口頭発表を行った。本研究では借手の会計処理を中心にして、1978年から2006年まで、中国におけるリース会計の変遷を解明した。そして、本研究では、中国が国際的慣行を導入するときの初期条件(例えば、中央計画経済、会計と税・財政の一体化、会計専門職業人の質など)がアングロサクソン国のそのものと違っていたため、中国のリース会計が国際基準とのコンバージェンスがコンフリクトを伴い、紆余曲折の過程であったことを明らかにした。 2.2017年12月に開催された九州経済学会第67回大会で「中国における金融商品の時価評価:90年代後半から2000年代前半までの議論を中心に」というテーマで口頭発表を行った。本研究では、90年代後半から2000年代前半まで、中国における金融商品の測定を巡る議論及び中国の会計制度における公正価値の適用を明らかにした。そして、中国では90年代後半から2000年代前半まで、公正価値会計へ向けた会計システムの改革の揺り戻しが起きたことを明らかにした。その理由は、90年代後半から2000年代前半までの中国の会計環境が公正価値の適用に制限を与えていたことにあるということを明らかにした。 上記の口頭発表を改訂し、学術誌へ投稿しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国の会計制度の変遷に対して、先行文献に基づいて、比較制度分析の視点から、リース会計及び金融商品の測定を中心として、制度変遷の誘因・内容・実施、及び周辺制度とのコンフリクトに重点を置きながら考察した。中国の会計制度の変遷に関する分析は、中国が現在国際財務報告基準(IFRS)をアドプットせず、IFRSとのコンバージェンスを進めながら、中国独自の会計基準を開発し続ける政策は、中国における会計基準設定機関が会計制度と周辺制度との間の相互依存性を認識していることに理由があるということを示唆する。言い換えれば、現在までの研究は、会計基準の国際化の流れにおいても、各国における会計システムの多様性の源泉を探ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き、中国における周辺制度がいかに会計基準の設定と実施に影響を与えているのかを解明していく。さらに、インタビュー調査を通じてデータを収集し、定性(質的)分析という研究方法を用いて、定量分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は前年度の文献調査及びその分析に基づいて、インタビュー調査のデザインと実施を行う予定である。助成金の使用理由及び計画は次の通りである。 1.国際財務報告基準及び中国の会計制度の新たな進展を調査するために、国際会計に関連する最新の文献、会計基準設定論に関する文献、比較制度分析に関連する文献を購入する。2.中国の会計基準設定および実施に係る様々なキーパーソンに対するインタビュー調査のために、旅費に助成金を使用する。3.データを分析するために、定性(質的)分析の関連図書および分析用ソフトウェアを購入する。4.研究成果を公開するために、国内外学術誌に投稿する際の英文校正に助成金を使用する。
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